2018 Fiscal Year Research-status Report
ジェンダーの視座を活かした「実世界と結びついた数学」 教材の評価と展望
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18K02942
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
瀬沼 花子 玉川大学, 教育学部, 教授 (30165732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日野 圭子 宇都宮大学, 教育学部, 教授 (70272143)
加藤 久恵 兵庫教育大学, 学校教育研究科, 准教授 (00314518)
加々美 勝久 お茶の水女子大学, 理系女性教育開発共同機構, 准教授 (50793395)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 数学教育 / ジェンダー / 実世界と数学 / 高等女学校数学教科書 / 数学の価値 |
Outline of Annual Research Achievements |
学力に関するOECDのPISA調査(生徒の学習到達度調査)、IEAのTIMSS調査(国際数学・理科教育動向調査)によると、わが国には依然として数学に対する自信の男女差があり数学は日常生活に関係がないと思っている生徒が多い。本研究の「問い」は、「実世界と数学を結び付ける教材を多様な観点から作成することにより、女子や数学が苦手な男子の数学に対する意識(数学の価値や有用性)が高まるのではないか」ということである。戦後わが国の数学教育は昭和20年代の単元学習への反動もあり「数学そのもの」を学ぶ傾向にある。一方で昭和18~19年の高等女学校数学は実生活と結びついており数学としても質が高く今日から見ても目を見張る内容がある。そこで3年間の研究期間で、高等女学校の数学教科書や数学編纂趣意書を中心に現行の数学教科書の教材や諸外国の新たな研究動向を加えながら、ジェンダーの視座を活かした「実世界と数学」の資料集を作成し数学の価値・有用性を問うアンケート調査を実施し、資料集の評価と活用の可能性を探ることとする。 本年度の主な研究成果は次の通り。 (1)研究代表者・分担者・協力者で3年間の研究目的・方法・分担について確認した。(2)戦前の女子用教科書、男子用教科書、昭和20年代の男女共学時代の数学教科書のコピー等を収集した。(3)わが国のジェンダーに関する論文を収集した。(4)高等女学校の数学教材及び現行の数学教科書の教材分析を行った。(5)戦前・戦中・戦後の男女の数学教育の違いを明らかにするために、永井啓子氏(元お茶の水女子大附属中学校副校長)及び長野東氏(東京理科大学数学教育研究会名誉会長)にインタビュー調査を行った。(6)諸外国の研究動向について情報収集を行った。(7)全国数学教育学会第49回研究発表会(2019年2月、広島大学)において高等女学校の数学教材に関する研究成果の発表を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の初年度にあたっては、3年間の研究目的・方法の共有及び分担の確認が重要であり、まずはこれを行った。また戦前の数学教育の状況を語り得るインタビュー調査対象者は90歳近くと高齢になっておりその実施可能性の検討は緊急の課題であるが、候補者の中から2名の承諾を得て無事実施することができた。戦前・戦中・戦後の女子数学教育や男女の数学教育の違いを明らかにするために、数学教科書等のコピー等関連する資料の収集・分析を行い、全国数学教育学会第49回研究発表会(2019年2月、広島大学)において研究代表者の瀬沼、及び、研究協力者の山崎(有明教育芸術短期大学講師)がその成果の発表を行った。諸外国やわが国の関連する研究動向について情報収集を行い、また現行の数学教科書の一次関数を中心に教材分析や場面分析を行った。これらの研究成果をもとに日本科学教育学会第43回年会(2019年8月、宇都宮大学)に課題研究を申請する計画を立てた。平成30年度予定の資料集案の作成は途中であるが、以上の事から、おおむね順調に進展していると自己評価を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
令和元年度の主な予定は次の通りである。(1)日本科学教育学会第43回年会(2019年8月、宇都宮大学)にて課題研究「ジェンダーの視座による数学教育」の企画申請を行い、本研究の研究代表者・分担者・協力者がそれぞれ発表を行う。また指定討論者等から助言を受ける。 (2)前年度に引き続き、戦前・戦中・戦後の女子数学教育や男女の数学教育の違いを明らかにするために、インタビュー調査を行う。(3)数学とジェンダー研究や実世界と数学の研究に優れた諸外国の動向を調査するとともに、当該国を訪問し本研究に関する助言を受ける。 (4)高等女学校の数学教材等、及び、現行の算数・数学教科書の教材分析を基に資料集案を作成し、ジェンダーに配慮した教育の研究者、高等女学校の歴史の研究者らの助言を受ける。(5)数学の価値、数学の有用性に関するアンケート調査項目の検討を行う。 令和2年度の主な予定は次の通りである。(1)ジェンダーの視座を活かした資料集、数学の価値・有用性に関するアンケート調査を教員養成課程の大学生や中・高等学校生に実施し、意識の変容を分析する。(2)アンケート結果について助言を受け、また関連する資料を収集する。(3)前年度に引き続きインタビュー調査を行う。(4)3年間の研究成果を国内・国外の学会において発表する。(5)以上を、研究成果報告書としてまとめる。
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Causes of Carryover |
PCを1台購入予定であったが、納品の関係で令和元年度に支出予定である。資料集案を作成し専門家から助言を受けるために旅費・謝金等を計上していたが、作成途中であるため令和元年度に支出予定である。さらに、日本科学教育学会第43回年会(2019年8月)における研究協力者、指定討論者の旅費の補充、令和元年度の外国訪問調査旅費の補充等に使用予定である。
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Research Products
(2 results)