2019 Fiscal Year Research-status Report
ハイリスクな試薬を安全に扱う実験教材の開発-シリカゲル担持硫酸を用いる化学実験-
Project/Area Number |
18K02962
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
井上 正之 東京理科大学, 理学部第一部化学科, 教授 (00453845)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 硫酸シリカゲル / ベンゼンのニトロ化 / エステルの合成 / マイクロスケール実験 |
Outline of Annual Research Achievements |
硫酸シリカゲルを用いるベンゼンのマイクロスケールニトロ化における反応条件を継続的に検討し,最適な条件を見出した。得られたニトロベンゼンは市販の「顔用脂取りフィルム(マイクロポーラスフィルム)」に吸着させることで反応系から分離した。この状態で塩化スズ(Ⅱ)を含む希塩酸と当研究室で開発した銅担持砂状スズを用いてアニリン塩酸塩に還元し,さらにアゾ染料に誘導して検出する実験を検討した。この実験では塩酸中に溶存させた塩化スズ(Ⅱ)が必須であった。各種検討の結果,塩化スズ(Ⅱ)はフィルムに吸着されたニトロベンゼンの溶出過程に深く関与していることが明らかとなった。これによってピペット2滴分のベンゼンからニトロベンゼン,アニリンを経由してアゾ染料を合成する一連のマイクロスケール実験の開発に成功した。 硫酸シリカゲルをガラス製の小カラムに充填し,ここに加熱した酢酸と各種第一級アルコールの混合物を流すことで酢酸エステルを合成する実験を検討した。あわせてバッチ法で硫酸シリカゲルを用いる酢酸エステルの合成を検討した。カラム法では,必ずしも反応の効率は良くないが(酢酸ベースの収率30~50%),エステルの香気は十分に確認でき,またヒドロキサム酸鉄(Ⅲ)法によるエステルの検出実験も行うことができた。バッチ法ではエステル化が円滑に進行し,良好な収率(酢酸ベースで65~70%,沸騰水加熱10分間)で対応するエステルが生成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに検討した硫酸シリカゲルを用いるセルロースの加水分解およびベンゼンのスルホン化については,投稿論文が日本化学会「化学と教育」誌に掲載された。ドデシルベンゼンおよび1-ドデカノールから合成洗剤を得る実験に関する実験と生成した陰イオン界面活性剤の簡易検出法に関しても良い知見が得られた。現在,論文投稿の準備中である。 ベンゼンのニトロ化,エステルの合成の各実験の開発も概ね完了し,投稿論文を準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
硫酸シリカゲルと臭化カリウムおよび酸化剤を組合わせることで臭素が発生することがわかっているので,この臭素を利用してベンゼンをはじめとする芳香族炭化水素の臭素化を開発し,実験教材化する。この研究では,ルイス酸の検討が課題になると考えられる。 昨年から検討を継続しているコンブ灰およびヨウ化カリウムサプリメントからのヨウ素の発生については,硫酸シリカゲルを用いずに硫酸鉄(Ⅲ)のみの添加でヨウ素が発生することが見出された。今年度は,この方向で実験教材の開発と授業プランの検討とを行っていく。
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Causes of Carryover |
会計処理の結果,残金が1670円になった。少額のため他予算との合算処理ができず,やむなく2020年度に繰り越した。
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