2018 Fiscal Year Research-status Report
STEM教育を指向した科学概念育成のための理科教材の開発と実践
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18K02981
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
伊藤 克治 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (10284449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大内 毅 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (40346838)
石橋 直 福岡教育大学, 教育学部, 講師 (80802842)
後藤 顕一 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (50549368)
野内 頼一 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター研究開発部, 教育課程調査官 (00741696)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 理科教材 / 3Dプリンター / プログラミング教育 / STEM教育 / 粒子概念 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初計画に従って、まず、三次元教材導出のための探索として、地球領域の教材開発を行った。惑星・衛星の大きさをモデル化する教材として、地球を直径1mのモデルとするビッグバルーン、月を直径26cmのモデルとする球体LEDライトを採用した。これを用いて、小学生児童を対象として、地球の凹凸、地球と月の相対的な大きさ、地球と月までの距離を実感させるような実践を行った。また、この実践メニューを大学生向けの授業や小学校教員研修にも用いた。その際の様子やアンケート結果等から、ビデオ教材とは違い、実際に目にする(手にする)三次元教材が実感を伴った理解に有効であることが示唆された。 並行して取り組んだ3Dプリンターを用いる教材開発では、本研究で購入したフルカラー3Dプリンターを用いて、各種条件下で球体の製作を行った。具体的には、白色PLAを用いて、直径20 mmの球体の半分を黒色に着色し、もう半分は着色しない白色のままとして、色斑を評価した。塗布方向を考慮した積層方法として180°が概ね良好であることが明らかになったので、本条件で水分子を製作したところ、水色に着色した水素原子と着色していない酸素原子の境界がよく分かり、良好な分子模型を製作することができた。 一方、STEM教育用マイコンボードのmicro:bitを教材とした、各種センサを取扱えるプログラミング教育のソフトウェアおよびハードウェア環境を整えた。外界から得られる様々な物理情報を可視化するためのプラットフォームをProcessingのシリアル通信機能を用いて整備し、さらにネットワーク利用により双方向性をもたせることで、遠隔からmicro:bitおよびその周辺機器の自動計測・自動制御を可能とした。このように多点観測結果をリアルタイムでグラフ表示できるシステムを安価に構築することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要欄に記載した通り、当初計画に沿って教材開発を行うことができた。 教材開発では、地球領域の三次元教材を開発し、児童や大学生、小学校教員対象に実践まで行うことができた。また、フルカラー3Dプリンターを用いた教材開発では、まず、加工精度について、球体模型と水分子模型を製作する過程で評価することができた。さらにSTEM教育の視点から教育用小型マイコンボードのシステム構成を行い、実践できるような具体的な装置を提案することができた。 以上のことから,本研究は「おおむね順調に進行している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
三次元教材導出のための探索について、引き続き天体モデルを中心とした地球領域について行うとともに、今後は物質領域についても並行して行う。特に、化学現象を五感で捉えやすい香料に焦点を当て、匂いの違いを分子構造と関連づけて理解できるように、適切な香料分子の合成とカラー3Dプリンターでの製作について研究を進めることにする。特に、高等学校および大学で学習する有機分子の三次元構造(構造異性体・鏡像異性体)を理解するために有効な分子模型として、どのような分子がふさわしいか、探索を進めることにする。このための基礎研究として、分子触媒を用いた有機分子の合成についても研究を進めることにする。 これと並行して、昨年度に引き続き、フルカラー3Dプリンターを用いて分子模型を製作することを進める。具体的には、上記の検討で導出した教材に適した分子モデルについて、3Dプリンターを用いて単色とフルカラーでそれぞれ製作し、比較検討して教育的効果を考察する。さらに、製作における加工条件、加工時間およびコストを調べ、最適加工条件を明らかにする。 一方、時間概念を育成するための教材開発としては、初年度に開発した教材の活用によって、物理情報を教育用小型マイコンボードによって安価かつ簡便に観測できるようになったため、今後は学校教育に導入できるよう、様々なセンサを活用した科学教育コンテンツを提案していく予定である。例えば、気温・湿度・日照・気圧などのデータを継続的に多点観測し、それを天気などの理科学習に実践することを考えている。 昨年度から継続して開発している教材は、本年度は実践して評価を進めていくことが増えてくるため、資質・能力の育成を専門とする研究分担者との評価も進めていく。 なお、本研究は概ね順調に進行していることから、研究計画の変更は予定しておらず、遂行上の課題もない。
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Causes of Carryover |
30年度は、教材開発において物質領域よりも地球領域に重点化したことにより、当初予定よりも教材開発用の経費(ガラス器具や薬品等の実験消耗品代)が少なく抑えられており、本年度に持ち越している。 本年度は物質領域も含めて、三次元教材の開発につながる基礎研究として様々な検討を行うとともに、教材を用いた実践も行う予定であり、当初予定の研究費と繰り越した研究費を合わせて使用する計画である。これに加えて、成果発表のための出張旅費を計上している。
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Research Products
(3 results)