2019 Fiscal Year Research-status Report
STEM教育を指向した科学概念育成のための理科教材の開発と実践
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18K02981
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
伊藤 克治 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (10284449)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大内 毅 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (40346838)
石橋 直 福岡教育大学, 教育学部, 講師 (80802842)
後藤 顕一 東洋大学, 食環境科学部, 教授 (50549368)
野内 頼一 国立教育政策研究所, 教育課程研究センター研究開発部, 教育課程調査官 (00741696)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 理科教材 / 3Dプリンター / プログラミング教育 / STEM教育 / 粒子概念 / 空間概念 / 時間概念 / 見方・考え方 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は当初計画に従って、まず、三次元教材導出のための探索として、物質領域の有機化学分野に焦点をあて、高等教育の酸化反応に関する基礎研究を行った。具体的には、一酸素原子付加反応であるエポキシ化に着目し、入手容易な市販の(R, R)-1,2-ジフェニルエチレンジアミンの一方をアルキル置換したジアミン触媒を用いて、カルコンの不斉エポキシ化の検討を行った。その結果、化学収率は49%と中程度であったが、92% eeの高い不斉収率を得ることができた。また、本反応の遷移状態について、三次元モデル教材の製作につなげるための遷移状態モデルについて提唱した。 また、地球領域における空間的な見方を養う教材開発としては、「流れる水の働きと土地の変化」を空間的に捉えるためのデジタル教材を作成し、これを小学生向けの科学実験教室で活用した。さらに、気象や天体といった長時間にわたって変化する現象を捉えるための装置として、児童生徒が撮影タイミングをプログラミングによって制御することができるインターバル撮影装置を製作した。プログラムの制作および機器の制御には、学校教育で急速に普及している児童生徒になじみのあるmicro:bitを用いた。カメラ撮影や静止画保存はRaspberry Piが担い、micro:bitからの信号を受けてシャッターを切る構成とした。これによって、安価で汎用性の高い理科実験環境を構築することができた。 一方、3Dプリンターを用いた教材製作の検討については、各種出力条件において曲げ試験用の試験体を作製して曲げ試験を行った。この結果、全ての試験体の製作条件において,長さ方向で積層側に反りが生じていることが明らかとなった(最大矢高3mm)。また,各種条件の中では充填率が重要であり、出力時間とコストを重視する場合は充填率を低く、強度を要する場合は高く設定することで製作できることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要欄に記載した通り、当初計画に沿って教材開発を行うことができた。 空間的な見方を養う教材開発としては、まず、高等教育の化学分野における不斉エポキシ化の検討を行い、入手容易な市販のキラルジアミンから合成した触媒を用いて、高選択的な不斉エポキシ化を実現できた。また、生活空間よりも大きな川の流れを理解するためのデジタル教材を開発し、小学生向けの実験教室で活用した。さらに、時間的な見方を養う教材開発としては、撮影タイミングを児童生徒自身がプログラミングによって制御することができるインターバル撮影装置の試作と動作の検証を行った。また、電気関連分野における理科教育と技術教育の関連性について調査し、プログラミング教育に関連する電気回路教材の開発と試行実習を実施することができた。 一方、3Dプリンターを用いた教材製作において、出力時間とコストのバランスを考慮した製作の条件について明らかにすることができた。 以上のことから,本研究は「おおむね順調に進行している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
三次元教材導出のための探索については、引き続き、中等教育および高等教育の有機化学分野において、有機化合物の構造と反応(分子間相互作用)を関係づけて理解するための候補となる化合物について探索を行う。中等教育向けには、高等学校化学で活用できるような身近な有機化合物に焦点を当て、高等教育向けには、反応の遷移状態を三次元的に理解できるように、比較的小分子の分子触媒を用いた不斉反応に焦点を当てることにする。 こうして候補となった有機化合物について、昨年度に明らかにした製作条件下で、3Dプリンターによる分子模型の製作を行う。その際、これまで主に検討してきた熱溶解造形方式(FDM)に加えて、光造形方式(SLA)を用いて同様の製作を行い、FDMとSLAの比較検討を行う。さらに、FDMタイプのカラー3Dプリンターで分子模型の製作を行い、実際に大学生向けの授業において試行実践を行い、その教育的効果について評価する。 一方、micro:bitとRaspberry Piを組み合わせたインターバル撮影装置を用いた実証授業を通して、児童生徒の科学概念育成の教育的効果を検証する。また、装置の扱いやすさ等を児童生徒および授業実践者(学校教員)の様子から分析して教材の改良を行うとともに、これまでの成果をまとめる。 本年度は最終年度になるため、これまでに開発している教材を使った実践と評価が増えるため、資質・能力の育成を専門とする研究分担者との評価も進めていく。なお、本研究は概ね順調に進行していることから、研究計画の変更は予定しておらず、遂行上の課題もない。
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Causes of Carryover |
昨年度は予定通りに教材開発用の消耗品費を使用したが、年度末にコロナウィルス感染拡大防止によって学会発表や研究打合せができなくなった分の経費を次年度に持ち越している。 最終年度となる本年度は、教材作成、実践と評価、成果発表まで行うことで、当初予定の研究費と繰り越した研究費を合わせて使用する計画である。
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Research Products
(7 results)