2019 Fiscal Year Research-status Report
成員の非組織性逸脱行為に対する組織対応が、他の組織成員の組織評価に及ぼす影響
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18K03001
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
礒部 智加衣 千葉大学, 大学院人文科学研究院, 准教授 (20420507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
相馬 敏彦 広島大学, 社会科学研究科, 准教授 (60412467)
古川 善也 広島大学, 教育学研究科, 研究員 (50826477)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 組織謝罪 / 逸脱行為 / 補償行動 / 集合的感情 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度までの検討により、非組織性の逸脱行為であっても、組織が謝罪し補償するという対応が好ましいことが繰り返し示された。そしてそれは、組織に責任がないと思っているにも関わらず好まれることから、謝罪すべきという規範の影響であると考察された。また、組織感情の影響については、恥よりも罪悪感が好まれる傾向にあった。そこで本年度では、多元的無知の影響(1)と、組織対応の評価ではなく組織への対応「希求」(2)とを検討した。加えて、逸脱行為の種類の違い(3)、脅威(不安)状況の影響(4)を検討した。 その結果、(1)組織性があるときにはない時よりも、迷惑評価に多元的無知が生じる傾向にあった。ただし、必ずしも多元的無知に陥っているわけではないことが示された。(2)組織対応の希求において、これまでの結果と異なり組織性の影響が示された。組織対応の前後により、世論の評価が異なる可能性がある。また、組織は恥よりも罪悪感を示すことを望ましいとされ、(3)これまで扱ってきたゴミの投棄は、他の逸脱行為(借りたものを返さない・他人が所有する木を伐採する)よりも、秩序の側面における道徳性と関連があり、迷惑だと判断されやすいことが示された。ゴミの投棄以外の逸脱行為では、先行研究と同様に組織性の影響も認められた。恥と罪悪感の両感情には高い相関があった。(4)平時よりも不安が高い状況において、迷惑行為への責任帰属が弱いことが示され、これは予測に反する結果であった。一方で、新型コロナに対する不安・運命的決定論が高い人ほど非組織性逸脱行為に対し、組織責任があるとする傾向にあることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究実績の概要においても示したとおり、前年度までの本課題における検討で明らかになったことと他の先行研究との齟齬や、より包括的な社会的影響(多元的無知や社会的脅威(不安))の影響について検討を行った。 その結果、迷惑行為の種類における違いがあることが確認された。秩序に影響すると捉えられる迷惑行為である場合には、非組織性逸脱であっても組織への帰属がなされやすい可能性が示された。また、多元的無知、つまり、世論が組織対応を求めておりそのような規範に準じた判断を行った可能性を検討した。組織に責任がないと思っているにも関わらず組織が謝罪し特に補償するという対応が好ましいという結果については、一部においてのみ多元的無知の影響があることが確認された。また、社会不安が非組織性逸脱行為への不寛容(所属組織への責任追及)に影響する可能性についても検討した。 上記のように、計画に沿った研究を行い、一定の成果が得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果より、逸脱行為に対する道徳性評価の違いにより、非組織性逸脱行為に対する組織対応への希求のあり方が異なることが示された。次年度においてはこの点に着目し、組織対応の評価においても同様の影響が示されるのか、また内集団成員による評価や集団アイデンティティにも影響が示されるのかについて、検討を行う。 集合的感情については、本研究が扱う場面において(先行研究が迫害等の行為を扱っているのに対し、本研究では迷惑行為を扱ったいる)、少なくとも日本では、組織が示す恥と罪悪感の違いを重視していない可能性がある。一方で、感情により組織対応への評価が異なるという結果も示されていることから、組織感情については、さらなる検討を行う必要があると考える。 個人特性について、評判への関心は非常に弱い関連しか認められなかった。引き続き、非組織性逸脱行為に対しても組織に責任を感じる傾向を調整しうる、個人・社会の特徴を検討する。
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Research Products
(5 results)