2019 Fiscal Year Research-status Report
日本的対人コミュニケーション・スタイルの実証的検討―日中米加比較による検証
Project/Area Number |
18K03003
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
高井 次郎 名古屋大学, 教育発達科学研究科, 教授 (00254269)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 対人葛藤 / 自己制御焦点 / コミュニケーション不安 / 感情コンピテンス / 比較文化 / 対人コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
日本人は間接的なコミュニケーションを好むことは広く知られている一方で、実証的研究の多くはそのことが確認できておらず、その原因は日本社会の個人主義化とされている。本研究は、このことを方法論上の問題として理解し、日本人の対人コミュニケーション・スタイルを正確に捉えるため、日本人の特徴を踏まえたコミュニケーション・モデルを考案し、文化比較を通じて直接的・間接的コミュニケーションの文化差を検討する。個人主義・集団主義をはじめ、文化的厳格さ、自己制御焦点などの文化的傾向が、コミュニケーション相手との親密性および地位格差に対してどのように作用し、それが自己中心的または他者中心的な自己呈示動機に影響を与え、直接・間接コミュニケーションの選好に至るのかを、さまざまな社会的状況をわたって検討した。 31年度は、①間接的コミュニケーションの解読能力と感情コンピテンスの関連、②対人コミュニケーション不安と自己制御焦点の関連を探索的に検討した。①については、日本とミャンマーの大学生を対象に、さまざまな関係性(親密度・権力格差別に)に対する対人葛藤場面における感情コンピテンスと葛藤方略の選好について調べた。主な結果として、ミャンマー人は日本人よりも全体的に統合方略と服従方略を好む一方で、後者は親密性の高い相手には妥協方略を選好することがわかった。②については、日本人、中国人とアメリカ人の大学生の異文化コミュニケーション不安と自己制御焦点の関係性を検討し、アメリカ人は不安が低い一方で、日本人と中国人は高かったことが明らかにされた。また、アメリカ人は促進焦点が高く、相手が異文化の人であっても自己アピールをすることがコミュにケーションの目的である様相がうかがえ、逆に予防焦点が高い日本人と中国人はコミュニケーションがうまくいかないことの不安を感じるだけに、回避気味であることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請時に予定していた研究の進行具合はやや遅れており、その理由は以下の通りである。まず、カナダのデータが未収集であるが、研究協力者が転職してしまい、現在それに代わる研究者を探している。対応として、大学生のサンプルにこだわらず、クラウドソーシングによるデータ収集も検討したが、中国ではそのようなサービスにアクセスできないため、大学生に限定されてしまう。一貫して大学生のサンプルを用いることの限界がある。 2)中国におけるデータ収集のための審査が長引き、研究①に中国は含めていない。規制が厳しいため、当地での研究計画審査(倫理審査含む)がなかなか受理されない状況にある。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、各国でのコロナウイルス感染問題のため、何らかの支障が生じることが予想される。特に大学生のサンプリングの問題が大きく、調査対象者を大学生からクラウドソーシングによってサンプリングすることでデータ収集の検討を行う。その場合、中国にはクラウドソーシングのアクセスがないため、対応として、香港や台湾でのデータ収集を検討する。昨年度は中国に代わってミャンマーを対象にしたが、引き続きミャンマーを比較対象にすることも検討する。
|
Causes of Carryover |
年度末に研究会を開催するため、中国から研究協力者を招聘する予定であったが、コロナウイルス感染拡大によって中止した。2020年度、開催を目指し、繰越金をそれに充てる。その際に、中国でのデータ収集についての可能性も検討する。
|
Research Products
(4 results)