2019 Fiscal Year Research-status Report
文化内の「周辺的存在」が果たす役割: 多国・多地域データでの検証
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18K03004
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
竹村 幸祐 滋賀大学, 経済学部, 准教授 (20595805)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 裕士 関西学院大学, 社会学部, 教授 (60621604)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文化 / 社会生態学的アプローチ / 適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、集団成員が環境に対して適応的な心理・行動傾向を持続的に維持するメカニズムを検討するものである。2019年度には、2018年度に実施した研究を受けて、既存のデータベース(e.g., 世界価値観調査のデータベース)の分析を通じて、国を単位に、環境の特徴と心理・行動傾向の特徴の関係を明らかにする研究を進めた。その際、分析単位となる国が相互に独立ではないことから生じる問題(Galton問題)に対処するべく、国間の地理的距離を考慮に入れたモデリングを行うことで、環境と心理・行動傾向の関係を厳密に評価する手法を検討した。 さらに、適応的な行動の持続について、ひとつのモデルケースとして、火災被害と火災対策行動の関係を分析する研究を行った。この研究では、公開データの分析を通じて、環境のもたらす脅威(この場合は火災)の被害が一時的に小さくなった時に、適応的な行動(この場合は火災対策行動)が持続しにくいかを検討した。分析の結果、火災被害を小さくする上で有効な行動(消防団への参加)が、火災被害が小さくなった後では減衰しやすいことが確認された。これは、脅威と脅威への対策がある種の循環を形成しているという本研究の仮説に合致する知見である。 さらに、集団(数人から構成される小集団)において、メンバー間の格差(特に、知識やスキルの格差)がその集団の行動・問題解決能力に及ぼす影響を検討する実験を行った。集団の中で適応的な行動が持続するためには、集団内での情報共有が鍵となる(集団内の誰かが経験した脅威を他メンバーにも伝達することで、適応的な行動が維持されやすくなる)と考えられる。この小集団実験では、メンバー間の格差の存在が、メンバー間の情報共有を阻害する可能性が示唆された。 以上、複数のスケールの「集団」に注目しつつ、集団内で適応的な行動が維持される(または減衰する)メカニズムの解明を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2018年度に育児休業取得に伴う中断はあったものの、おおむね順調に進んでいた。しかしながら、2019年度の後半に実施する方向でいた国内調査が、新型コロナウィルス感染症の影響で、現在も実施できずにいる。この調査では地域コミュニティにおける社会関係などを調べる予定でいたため、感染症の影響が続くうちは実施しにくく、この先の研究実施にも影響が出る恐れがある。
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Strategy for Future Research Activity |
地域コミュニティにおける社会関係についての調査(郵送調査)は、感染症の流行状況を見ながら、実施延期も視野に入れつつ検討する。同時に、利用可能な公開データの収集・整備・分析を進める。
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Causes of Carryover |
既述の通り、新型コロナウィルス感染症の影響で、実施スケジュールを調整中の調査がある。
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Research Products
(13 results)