2020 Fiscal Year Research-status Report
文化内の「周辺的存在」が果たす役割: 多国・多地域データでの検証
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18K03004
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Research Institution | Shiga University |
Principal Investigator |
竹村 幸祐 滋賀大学, 経済学部, 教授 (20595805)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 裕士 関西学院大学, 社会学部, 教授 (60621604)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文化 / 社会生態学的アプローチ / 適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、環境がもたらす脅威に対して適応的な行動を人々が維持するメカニズムを検討するものである。そのひとつのモデルケースとして、火災被害と火災対策行動の関係を分析する研究を進めている。状態空間モデルを用いて火災統計データを分析した結果、①消防団員数は、後の火災被害の一部(e.g., 全焼棟数)と負の相関関係を持ち(i.e., 団員が多いと後に被害が減り、団員が少ないと後に被害が増える)、消防団参加が有効な火災対策行動であること、ならびに、②火災被害の一部は、後の消防団員数と正の相関関係を持つこと(i.e., 被害が大きいと後に団員が増え、被害が小さいと後に団員が減る)などが示された。これらの分析結果から、火災被害への対策行動(消防団への参加)が、火災被害が大きくなった後で強化され、逆に火災被害が小さくなった後では減衰しやすいことを示唆している。これは、脅威と脅威への対策がある種の循環を形成しているという本研究の仮説に合致する知見である。 また、2020年度には、新型コロナウィルス感染症とそれへの対策行動(e.g., 手指消毒)についての国際調査を実施した。調査はオンラインで実施され、日本・韓国・香港・イギリス・アメリカの5社会からの回答を得た。分析の結果、①政府が感染対策行動促進のためにサンクション(非実践者への制裁、実践者への報酬)を行使していると感じている者ほど、感染対策行動を実践していること、②その効果は、「他者は感染対策行動を実践している」という知覚に媒介されることが明らかとなった。この知見は、脅威への対策行動を促進する上で、サンクション行使が可能な政府の役割は重要であるものの、サンクションの直接的な効果ではなく、サンクションの存在が「自分以外の他者がどう行動しそうか」に関する予期を与え、それを介して自己の行動に影響することを示している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2019年度の後半に実施する方向でいた、火災被害と地域コミュニティにおける社会関係を調べる調査は、新型コロナ感染症の影響で実施できずにいる。しかしながら、新型コロナウィルスという、別の脅威への対策行動についての調査を実施することで、この点を打開することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
火災被害と対策行動について、地域コミュニティにおける社会関係を視野に入れた郵送調査は、依然として実施が難しいと見ている。これに代わるものとして、個人的な火災被害経験(直接的なものだけでなく、見聞きした間接的なものを含む)と火災対策行動の関係を調べるオンライン調査の実施を考えている。また、公開されている火災統計データを用いた時系列分析も、対象エリアを広げて拡張する予定である。さらに、新型コロナウィルス感染症についての調査も、第2調査を2020年度の末に既に実施しており、これを用いた時系列データの分析を進める予定である。
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Causes of Carryover |
既述の通り、新型コロナウィルス感染症の影響で、実施スケジュールを調整中の調査がある。
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Research Products
(8 results)