2020 Fiscal Year Annual Research Report
Psychological mechanisms underlying the maintenance of gender inequalities
Project/Area Number |
18K03007
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
森永 康子 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 教授 (60203999)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | ジェンダー / システム正当化 / ジェンダー格差 / ステレオタイプ / バックラッシュ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,日本においてジェンダー格差が肯定・維持されるしくみの心理学的基盤について,主としてシステム正当化理論の立場から検討することを目的としている。システム正当化理論とは,未経験の状況に対する不安を消したいという認識的動機などを満たすため,人々は現状維持を求め,既存の社会システムを正統なものとみなす傾向を持っていると主張するものであり,社会格差がなぜ維持されるのかを説明する理論である。そして,システム正当化により人々は心理的安寧を得ると考えられている(システム正当化の緩和機能)。 2020年度に検討した事項は以下のとおりである。1. システム正当化の緩和機能の検討:女性がシステム正当化をすることで心理的幸福感(人生満足度)が高くなることを,2つのデータから確認した。 2. ジェンダー格差が維持されるメカニズムの検討:ジェンダー格差が維持されるメカニズムとして,2020年度にはバックラッシュ効果とジェンダー不平等の解決責任の認知について検討を行った。(1)バックラッシュ効果とは,ジェンダー・ステレオタイプに反する人々に社会的・経済的罰を与えるもので,既存のシステムを維持しようとする動機によってもたらされる。2020年度には,昇進意欲を示した女性と育児休業を取得する男性という2側面からバックラッシュについて検討した。昇進意欲を示す女性に対しては家庭役割に言及するというバックラッシュが行われることが示された。また,育児休暇を取得する男性は,バックラッシュではなく,むしろ日本の集団規範に違反していると知覚されることが示された。(2)格差が維持されるメカニズムとして,格差の解消を格差の下にいる低地位者の努力に委ねるプロセスが考えられる。女性の自律やエンパワメントを強調することが,ジェンダー不平等の解決責任を女性に帰属する傾向と関連することを検討した。
|
Remarks |
学会等で用いた発表資料は https://osf.io/ucakf/ に掲載
|
Research Products
(10 results)