2020 Fiscal Year Annual Research Report
Structural analysis of the bullying-accepting discourse in Japan and social implementation of the bullying prevention discourse.
Project/Area Number |
18K03008
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
八ツ塚 一郎 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (10289126)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | いじめ / いじめ定義 / 第三者委員会報告書 / 言説分析 / メタファー |
Outline of Annual Research Achievements |
「いじめ容認型言説」の存在によって、われわれの「いじめ」に対する認識や姿勢は歪曲されており、適切な「いじめ」対応が妨げられている。この問題意識から出発した本研究は、ミクロ・マクロ双方向からの言説分析によって問題の構造を明確化するとともに、事態を打開する対抗言説についても、その構想と社会実装の着実な成果を挙げることができた。本年度はコロナ禍という予想外の事態があったものの、地域におけるいじめ対策審議会や第三者調査委員会、また感染症対策を十分に取ったうえでの対面的授業実践や遠隔授業など、研究の展開に資する新たなフィールドを確立することもできた。さらに、「いじめ容認型言説」という切り口を通して、問題の深層にある日本語言説の構造、および、傍観者の問題に象徴される集団力学的構造という、新たな検討の方向性を得た。 マクロ言説の観点からは、「いじめ」という語の定義そのもののうちに、現象に対する容認の構造が含まれている可能性を、前年度から継続して検討している報告書言説や各種の報道言説、さらに、公的文書や代表的な研究言説の複合的な分析を通して明らかにした。社会問題としての複雑さ、また、変化する事態のスピードの速さに翻弄されるかたちで、刻々の事態に部分適応した言説が、結果として全体像の把握に失敗し、「いじめ」を容認するかの如き語り口に陥っている構造を摘出することができた。 ミクロ言説については、前年度に開始した「火事のメタファー」をはじめとする対抗言説について、教育的な対話、審議会等における意見交換などの実践的場面でその妥当性や有効範囲を確認するとともに、教職大学院および学部教職教育の教育領域における実装を本格化し、院生や学生との対話を通してその普及および展開を進めており、受講者から活発なレスポンスと高い評価を得るに至っている。
|
Research Products
(5 results)