2020 Fiscal Year Research-status Report
地方回帰型移住における移住者の地域選択と適応過程に関する社会心理学的研究
Project/Area Number |
18K03009
|
Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
加藤 潤三 立命館大学, 産業社会学部, 准教授 (30388649)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前村 奈央佳 神戸市外国語大学, 外国語学部, 准教授 (50632238)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 地方回帰型移住 / 移住者 / 地域選択 / 適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の主目的は、「地方回帰型移住」における移住者の移住地選択および移住者の適応・不適応に関連する心理的・社会的要因を検討することである。 2020年度は、移住者を対象とするアンケート調査(Web調査)を実施し、量的な観点から上記研究目的について検討を行った。なお調査では、地方回帰型移住の特徴をより明確にするため、また移住パターンによる相違を明らかにするために、1.地方移住(都市から地方への移住)、2.地方間移住(地方から地方への移住)、3.都市移住(地方から都市への移住)、4.都市間移住(都市から都市への移住)の4パターンを設定した。 調査は、2020年12月下旬から2021年1月上旬にかけ、Web調査((株)マクロミルに委託))で実施した。対象地域としては日本全国であり、最終的に691名から回答を得た(地方移住252名、地方間移住155名、都市移住129名、都市間移住155名、男性385名、女性306名、平均年齢45.5歳)。 まず移住地選択において、重視するコミュニティの要素(コミュニティ価値)を比較したところ、地方移住では、他の移住パターンよりも仕事・人間関係・情報通信が重視されていた。一方都市移住や都市間移住では、交通や商業施設が重視されていた。移住者の適応に関しては、地方移住者および地方間移住者は、都市移住者・都市間移住者よりも適応度が低かった。適応度の促進要因として、コミュニティに対する満足度との関連を検討したところ、コミュニティに対する満足度は、「生活基盤満足度」と「暮らしの豊かさ満足度」の2因子に分かれ、いずれの満足度も適応度と有意な相関が認められた。 今後さらに分析を進めて、学会での研究発表および論文への投稿を行う。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題は、本来2018~2020年度の3か年計画であったが、研究代表者の異動、研究分担者の産休、また新型コロナの感染拡大により、当初予定していた調査を中止・延期せざるをえなかった。延期していた調査を実施するべく、研究期間を1年延長している。 2020年度も新型コロナの影響が大きかったが、Web調査であったため何とか実施することができた。残る研究計画ではインタビュー調査を想定しているが、新型コロナの終息が見えない中、対面での実施は困難である。代替手段として、Webインタビューが考えられるが、対面に比べてラポールの形成やノンバーバルな反応がとりにくいといった問題もある。調査の実施方法を慎重に再考しながら、2021年度内に調査が完了するよう努める。
|
Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、不適応によって移住を断念した移住者(帰還者)を対象とするインタビュー調査を実施する。この調査により、移住の継続を阻害する心理的・社会的要因について検討を行う。なおインタビュー調査の実施にあたっては、新型コロナの感染が終息しない現状では対面での実施が難しく、代替手段としてWebインタビューなどを検討する必要がある。ラポールの形成やインタビュー内容の質的な妥当性について慎重に検討しながら、適切な方法を模索し、実施していく。また新型コロナの状況を鑑み、調査対象者の状態や都合を優先させながら、調査を実施していく。 また2020年度に実施したWeb調査の結果について、より詳細な分析を行い、国内外の学会での発表および学会誌への投稿を行っていく。
|
Causes of Carryover |
当初計画していた調査を中止・延期したため、研究期間を1年延長した。中止・延期した分の調査費用を次年度分として繰り越し、2021年度に使用する。 2021年度の使用計画としては、主にインタビュー調査に使用する。具体的には、調査対象者への謝礼、テープ起こし、分析ソフトの購入に費用を要する。
|