2019 Fiscal Year Research-status Report
コンテクストへの依存と省略三段論法の許容度についての比較文化的研究
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18K03010
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
山 祐嗣 大阪市立大学, 大学院文学研究科, 教授 (80202373)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コンテクスト / グローバル化 / 弁証法的思考 / 後知恵バイアス / モラル推論 |
Outline of Annual Research Achievements |
東洋の高コンテクスト文化・西洋の低コンテクスト文化についての理論論文として "Explanations for cultural differences in thinking: Easterners'dialectical thinking and Westerners' linear thinking"が、Journal of Cognitive Psychology誌で発表された。東洋人の弁証法的思考傾向は、矛盾をコンテクストを用いて解消できるという信念によって生じていて、さらに、コンテクストの高低は、ビッグヒストリーアプローチから説明可能と主張している。また、グローバル化と低コンテクスト化についての書籍である『生きにくさ」はどこからくるのか―進化が生んだ二種類の精神システムとグローバル 化』が2019年6月に出版された。グローバル化がもたらした低コンテクスト状況に現代人の「生きにくさ」があることを主張している。また、Salvano-Pardieuとの共編である"Adapting human thinking and moral reasoning in contemporary society"がIGI Globalから2019年11月に出版された。この本は、現代のモラルの問題を、グローバル化による文化の低コンテクスト化という視点で書かれたものである。 このほか、"Low context culture and high context culture: A cross-cultural study on enthymematic inference"についての比較文化研究の、日本、韓国、台湾、フランス、英国からのデータ収集を終えた。コンテクストの高低がどのような次元から構成されているを検討する実験である。さらに、裁判において証言した、知覚的(視覚的)後知恵バイアスについての追加実験を行った。後知恵バイアスは東洋人で大きいとされており、2つの国際学会において発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
理論論文"Explanations for cultural differences in thinking: Easterners'dialectical thinking and Westerners' linear thinking"が発表され、思考の文化差を「西洋の低コンテクスト・東洋の高コンテクスト」という枠組みで理論化できた。また、この低コンテクスト化について、『生きにくさ」はどこからくるのか―進化が生んだ二種類の精神システムとグローバル化』と"Adapting human thinking and moral reasoning in contemporary society"と出版することができた。また、"Low context culture and high context culture: A cross-cultural study on enthymematic inference"についての比較文化研究の、日本、韓国、台湾、フランス、英国からのデータ収集を終えた。これらの進展は、おおむね順調であることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
「西洋人の低コンテクスト文化・東洋人の高コンテクスト文化」という区分について、より証拠を集める実証的な研究を行う。とくに、「低コンテクスト文化」は、異文化交流を行うように、コンテクストを使用しにくいという状況に対する、効果的な戦略という位置づけができる。そうすると、「コミュニケーション相手が文化を共有していない」状況で、どのようにして「線形的」な思考が導入されるのかを検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの流行により、2月末からの研究活動が制限され、使用することができなかった。2020年度に物品費として使用する。
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