2022 Fiscal Year Research-status Report
コンテクストへの依存と省略三段論法の許容度についての比較文化的研究
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18K03010
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Research Institution | Osaka Metropolitan University |
Principal Investigator |
山 祐嗣 大阪公立大学, 大学院文学研究科, 教授 (80202373)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | コンテクスト / 比較文化研究 / モラルジレンマ / 二重過程理論 / 省略三段論法 |
Outline of Annual Research Achievements |
日本、韓国、台湾、フランス、英国において実施した省略三段論法の受容の文化差(高コンテクスト文化において受け入れられやすい)を検討した研究は、本プロジェクトの中核だが、現時点で論文は学術誌に投稿されてはいるがまだ審査中である。省略三段論法の受容についての文化差は見られなかったが、相手が知っているものを省略しても良いかどうかについては、日本、韓国、フランスにおいて許容されやすかった。これは、言語における省略の影響と推察され、高コンテクスト文化のコードスイッチングである。コードスイッチングとは、情報の受け手がどの程度コンテクストを共有度に応じてのスイッチである。これについて、Wu, Yama, & Zakaria (2023)の研究でさらに明らかにされている。この研究では、中国人と日本人が互いに相手を低コンテクスト文化スタイルとみなしており、この理由は、両国民とも相手国民に対して、自分の国のコンテクストが共有されていないとして、低コンテクストスタイルで話しているからであると、推定された。さらに、この研究は、低コンテクスト文化は、異文化コミュニケーションによって生ずるとされる理論(Gudykunst, 1991など)の検証にもなっている。 このほか、Frointiers in Psychologyにおいて"The role of culture in human thinking and reasoning"という特集の編集を行った。また、学術誌の「認知科学」の論文において、熟慮は直感をどのようにしてどの程度制御できるかについても論じた。さらに、Bence Bagoを中心に多くの国々からデータを収集した義務論的・功利的推論に基づくモラルジレンマ研究が、Nature Human Bhaviourから出版された。この推論は基本的に文化普遍的だった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
省略三段論法の比較文化研究の論文の執筆が遅れた。
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Strategy for Future Research Activity |
低コンテクスト文化は、異文化交流が頻繁な環境で生じやすいということが検証された。本検証をもとに、では異文化交流が頻繁な環境はどのように形成されるのかを検討して、より生態学的な文化差理論を構築する。また、高コンテクスト文化から低コンテクスト文化に変化するときに、どのような社会的問題が生じうるのかについて検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの影響により、対面での議論等に影響が生じ、研究が遅れている。
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Research Products
(11 results)