2020 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical and empirical study on societal differences in adaptive strategies for building trusting relationships
Project/Area Number |
18K03011
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
真島 理恵 北海道医療大学, 心理科学部, 講師 (30509162)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 信頼 / 協力 / 機会コスト / 進化 / 社会差 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、関係構築・維持場面において適応的となる行動方略を機会コストの大きさごとに特定するモデルの構築と、理論モデルの実証的検討を目的とする。新規の関係構築場面では、低機会コスト社会に身を置く人々に比べ、高機会コスト社会に身を置く人々の方が、すみやかな関係形成を可能とする行動方略や能力を備えることが示されているが、関係形成後の関係維持方略と機会コストの関係は未だ明らかではない。信頼の解放理論に基づけば、社会的不確実性を長期的関係の形成によって解決することが適応的な低機会コスト環境で、関係維持方略が獲得されることが示唆されるが、「潜在的に大きな利益をもたらす可能性のある、関係外部の相手」との相互作用が最も大きな利益をもたらすのは関係開始直後の浅い関係よりむしろ、深化した相互信頼関係においてである。そのため、関係維持方略を獲得することの重要性が、低機会コスト社会より高機会コスト環境で相対的に小さいかは自明ではない。そこで本研究では2019年度までに、場面想定法を用いた質問紙調査を実施し、関係維持場面における行動方略と機会コストの関係について検討を行い、低機会コスト環境に身を置く人々が獲得している関係維持方略が、高機会コスト環境において必要とされる、見極め能力を含む対人スキルとは別の形で獲得されている可能性が示唆された。2020年度はこれらの知見に基づき、機会コストと関係維持方略との関係をより詳細に特定する実験室実験・調査を実施する予定であったが、新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う対応のため実施が困難となったため、やむなく研究実施を延期した。また、対人関係場面における他者に対する行動方略を測定する指標のひとつとして、新型コロナウイルス感染拡大状況下における、他者に対する行動を測定する尺度作成をこころみ、感染予防規範における規範逸脱者に対する排除・回避傾向の指標を作成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う対応のため調査や実験を含む研究計画の遂行が非常に困難となり、遂行の延期を余儀なくされた。また、成果を発表予定であった国際学会も開催が次年度に延期された。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに明らかとなった知見に基づき、機会コストと関係維持方略との関係をより詳細に特定する実験室実験・調査を実施する。これまでの検討の結果示唆されたのは、機会コストが大きい環境に身を置く人ほど、新規の関係拡張のみならず、既存の長期的関係の維持にも資源を投資するというパターンであった。この結果への解釈として考えられる第一の可能性は、機会コストの小さい環境ではそもそも将来の影によって行動を縛られる程度が大きいため、人々はパートナーの裏切りに対応する方略を備えていない、ということである。もう一つは、低機会コスト環境に身を置く人々が獲得している長期的関係維持方略は、パートナーに直接働きかける対人スキルとは別の形で実装されている可能性である。例えば、伝統的ムラ社会のような低機会コスト社会でパートナーの裏切りが生じた場合、パートナーに直接働きかけるよりも、パートナーに強い影響を持つ人物(ネットワークの中心人物など)を把握し、その人物に働きかけることで間接的にパートナーの行動に影響を与えるほうが、より効果的であるかもしれない。もしそうなら、低機会コスト環境に身を置く人々は、高機会コスト環境に身を置く人々に比べ、集団内の関係性を適切に把握し、使いこなす能力を獲得することによって、結果的により効果的に長期的関係を維持している可能性が考えられる。この可能性について検討するため、集団内の関係性把握、及び関係性を利用してパートナーの行動に影響を与えることにどの程度資源を投資するかを測定するゲームないしは質問紙を開発する。そのうえで、人々が身を置く機会コストとこれらの投資方略との関連を、データを収集して明らかにする。その結果に基づき、どのような機会コストの下で、関係構築・維持場面でどのような行動方略が適応的となるかを特定するモデルの作成を行う。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大とそれに伴う対応のため、質問紙調査や実験室実験、国際学会への参加が困難となり、計画遂行の実施を余儀なくされたため。そのため本年度、学会への参加、実験用タブレットPCの購入、実験参加者への謝金支払い、質問紙印刷用のプリンタ・印刷用紙の購入等が必要となる。
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