2018 Fiscal Year Research-status Report
An integrative approach to elucidate social cognition and behavior generated by ambient temperature
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18K03015
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
大江 朋子 帝京大学, 文学部, 准教授 (30422372)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 社会的認知 / 温度 / 自己 / 他者 / 身体 / 攻撃 / 温かさ / エンボディメント |
Outline of Annual Research Achievements |
環境温度が人の社会的反応に及ぼす影響として知られる知見は,環境温度が攻撃行動と対人的温かさの両方を促進するという,一見矛盾するものである。本研究プロジェクトでは,これまで異なる研究文脈において検討されてきた両者の流れを統合し,環境温度が関わる社会的認知基盤とそこから多様な社会的行動が生起する過程の解明を目指している。2018年度には,環境温度を操作または測定し,環境温度が攻撃性や温かさに関わる社会的認知ならびにストレス反応に関係するかを調べた。
研究1: 実験ブース内の温度を約19~30℃の連続した範囲で操作し,実験まで空腹状態であった参加者をいずれかの温度条件に無作為に割り当てた。印象評定では,(1)ブース内温度が高いほど,参加者は他者より自分自身を相対的に温かいと評定した。(2)これと同様の結果が外気温についても得られた。ブース内温度と外気温の相関はなかったことなどから,これらの気温は異なる過程で同様の影響を印象評定に与えたと考えられる。加えて,男性参加者は,(3)外気温が高いときに低温度のブースに入ると,自分と快感情を潜在的に連合させる傾向が,(4)空腹状態のままであると,ブース内温度が高いほど,自分と「防衛的」を潜在的に連合させる傾向が,(5)ブース内温度が適温から離れると,空腹状態に関らず,自分と「攻撃的」を潜在的に連合させる傾向があった。
研究2: 実験ブース内で実験参加者に短時間の休憩(e.g., 音楽を聴取する)をとらせた後,ストレス反応の指標として唾液アミラーゼ活性を測定した。休憩の内容に関わらず,実験開始直前のブース内温度が高いほど,参加者の唾液アミラーゼ活性は低かった。測定されたブース内温度は21.7~28.4℃であり,この範囲において相対的に温かい空気に触れているほど,身体的なストレス反応が緩和されることを示唆する結果であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究1では,実験ブース内の温度を連続的な範囲で操作する実験を行い,外気温とは切り離した環境の温度(ここではブース内温度)が社会的認知に与える影響を検討することができた。その成果の一部は2019年2月にアメリカで開催された学会において発表された。研究2では,温度とストレス反応の関係を調べるためのデータを収集することもでき,その成果は2019年3月に発行された紀要論文の一部となった。
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Strategy for Future Research Activity |
課題申請時の予定通り,バーチャルリアリティ環境を整備し,他者への攻撃行動や向社会的行動が仮想現実空間において生起するかを観察または測定する。バーチャルリアリティを用いて実験を行っている研究者らの協力を得ることもでき,申請時の予定通りに研究を遂行できると思われる。
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Causes of Carryover |
2018年度末に購入を予定していた機材の新機種が翌年度早期に販売予定となり,新機種を利用したほうが適切な実験を行うことができると判断し,その機材と周辺機器の購入を延期した。2019年度には予定通りその機材を購入する。
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