2018 Fiscal Year Research-status Report
マインド・コントロールからの離脱心理プロセス解明とテロリスト対策の研究
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18K03018
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
西田 公昭 立正大学, 心理学部, 教授 (10237703)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 離脱の心理過程 / 心理過程に必要な3要因 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度では、主に計画1におけるマインド・コントロール状態にあった者がそこから離脱した経験の手記、裁判関与で得られた調書、陳述書や公判資料などのデータ整理を進め、上記4過程から再分析した。またその補足的な位置づけていた計画2のインタビュー調査も若干名に実施を開始した。 研究準備段階で想定していた作業仮説に従って、1)覚醒、2)疑問分析、3)決意、4)行動の4視点から、オウム真理教の裁判関連書類の他、様々なカルト脱会者の手記をもとに、分析して検討した。その結果、4つの心理過程にステップをとらえることが有効なモデルである結論に至った。第1段階は、「正当化段階」であり、集団の思想や指令に対して疑問を抱きながらも従事し、その行動を正当化する認知や説明を繰り返す段階がある。そしてその正当化が不可能な状態に陥って、第2段階「覚醒段階」が起こる。この段階では、思想や指令が集団目標や個人の目的と決定的に矛盾したり、不整合であったりする経験から確信を喪失して、誤りを受容した結果、心理的不安定に陥る。さらに第3段階「誤信確認段階」では、これまで知らなかった情報、特に隠されていた情報を探索し、思想や指示が明らかに誤りであり、騙されていたことを確認する段階になる。そして最終的に第4段階として、その集団に関わる前の信念群(理想、目標、自己、因果、権威に関する信念群)とこれからの信念群とを繋ぎ合わせ、集団内で活動した時期の信念群と調整して統合していく「回復段階」過程に入る、という仮説モデルがほぼ完成した。 なお、これら4過程の各段階で、次の段階へと進むために必要な心理的要因も見出された。その要因には、1)動機づけ、2)批判的思考、3)情緒的な支援の3要因が見出され、各段階に応じて異なる状況認知、専門家や元メンバーや家族といった支援者の役割があることが明らかになった。以上が、現在までの成果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
4計画のうち、最も基盤となる計画1は、実施できた。しかし残り3年を見通すと、計画3の海外のテロ対策専門機関への調査が進んでおらず、余裕があるとは言い難いが、計画2のインタビュー調査や、計画4の質問紙調査を準備することが可能な段階に入れたといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
教育、社会貢献などで忙殺されてしまって研究に従事できない時期も多々とあるが、臨機応変に対応していくことで計画どおりに進めたい。海外地での調査を計画しているが、今のところ、対象予定の機関との交渉が成立していないので、国際連合などと連絡を取りながら、調査の実施を目指したい。また計画4の質問紙調査のための対象者との関係を構築することも大事である。多くの破壊的カルト脱会者の協力を得るためには、これまで以上の多方面との交渉が求められる。
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Causes of Carryover |
まず、テロリズム対策についての海外の専門研究機関への訪問調査が実施できていないことによる。また、成果発表のための国際学会への支出が年度末になってしまったことがあった。これら2つが主な原因であり、前者の原因は、今年度には実施する予定であるし、後者の原因は、すでに計画し支出を終えているために解消した。その他の理由は、文具や国内での出張、アルバイト謝金などでの支出であるが、他の単年度予算で支出することを優先せざるを得なかったために使用しなかったことにある。この点に関しては、研究活動を活発化することによって解消していく。
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