2020 Fiscal Year Research-status Report
三重県答志島における青年流出に伴う文化の維持と変容に関する文化心理学的研究
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18K03026
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Research Institution | Yasuda Women's University |
Principal Investigator |
澤田 英三 安田女子大学, 心理学部, 教授 (00215914)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 答志島 / 青年 / 文化心理学 / 伝統伝承 |
Outline of Annual Research Achievements |
「三重県答志島の御木曳祭(式年遷宮)にみられる青年への伝統の継承に関する文化心理学的研究」という研究題目で行った2018年の研究の続編を行った。全国で唯一現存する青年宿(寝屋子)があり、かつては青年団活動も活発であった三重県鳥羽市答志島は、近年では青年の島外流出が著しい。20年に一度の御木曳祭(御多羅志神社の式年遷宮に伴うの祭)は2018年6月に開催されたが、ここ20年の間に祭の主役となる青年が減少したことによって、伝統の一部を修正しつつ祭を継承することを余儀なくされた。具体的には、20年後も祭を存続するという共通認識のもとで、これまで青年(団)が担っていた役割をその前後の年代が補っていた。また、祭当日には島外に住んでいる青年や師匠も帰省し、裏方を手伝ったり、大きな声で祭りを盛り上げており、島を離れても大切な祭りという認識は堅持されていた。 2020年11月には、御木曳祭の時に運ばれたご神木を用いて建て替えられた新しい本殿への遷宮祭が行われた。この祭りは、御木曳祭のような青年が主役になる形ではなく、地域を支える主要な組織の代表者(主に年長者)が祭礼に参加する形で進行した。一部の青年は、新型コロナ感染対策のための密防止誘導などの警備というあくまで裏方の担当に終始していた。コロナ禍の開催となったために、恒例の住民が歌い演じる舞台の出し物が中止となり、島外に住む人々の帰省も少なく、20年に一度開催されるいつもの遷宮祭とも手順や雰囲気も異なっていたという。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究では、研究1「20年に1度開催される御木曳祭の音頭取り養成にみられる祭りの継承と変容」と、研究2「青年の島外流出に伴うコミュニティ内の役割の変容と住民の納得の様式」の2つの下位研究を設定している。そして、2020年度では、研究2を本格実施するとともに、研究1の続編の遷宮祭の観察を行う予定であった。 本年度は、研究1について感染防止策を徹底した遷宮祭の観察は実施できたものの、研究1の聞き取り調査と研究2については、感染防止の観点から飲食を伴う集まりへの参加やインタビューそのものを控えたため、青年や住民から祭りや青年の島外流出に対する想いを聞く調査が十分に実施できなかった。 よって、2020年度が最終年度としていた当初計画を変更し、1年の延長を申請し認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
十分に実施できなかった2020年度の当初の計画では、研究2の継続調査を行うとともに、研究1と2の総括を行うこととなっていた。しかし、コロナ禍の影響で研究1・2とも進展に遅れが生じている。また、その影響は現在(2021年5月時点)でも続いており、今後についても、調査の実施が可能となる時期については先が読めないところである。そのような中にあっても、これまで収集した資料を整理・分析するとともに、そこから仮設(仮説)的なまとめや模式図を作ることは可能であると考える。 研究1については、遅れている記録・分析した御木曳祭における伝統の伝承についての仮設(仮説)を答志の対象者に提示し、その内容や意味を説明しながら確認を行う。 研究2については、前年度に行うことができた調査で明らかになりつつある地域内での世代ごとの役割や青年に対する支援体制についての結果を整理・分析するとともに、仮設(仮説)的な模式図を作成して対象者に遠隔で提示し、意見を求めることを行う。また、現地でのインタビュー調査が実施可能になった際には、実施が滞っていた青年団や他の成人集団(消防団、漁業組合、各町内会)などにインタビューを行う。また、島に残った青年、島を離れた青年のいきさつや思い、島で生きる大人たちの思いや納得の仕方についてインタビューを通して明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
三重県答志島への出張・調査について、コロナ禍や様々な影響によって、当初予定していた回数の調査ができなかったこと、研究補助者となる予定だった学生・院生との調整がうまくつかず、研究補助を担ってもらう機会がなかったことが、このような残高を生む結果となった。 今後のコロナ禍の影響がどのように展開するか不明な点はあるが、まずは支出計画をしっかり立てた上で、変更が必要な場合は早急に次善の対応を行っていく。特に、研究をまとめる最終年度であるので、まとめるための経費への支出を行う。
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