2020 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the cultural, socio-environmental factors of the interdependent happiness.
Project/Area Number |
18K03027
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
一言 英文 関西学院大学, 文学部, 准教授 (80752641)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 文化 / 幸福 / 社会環境 / 個人差 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、多様な文化における協調的幸福感と個人差変数との関連について検討した。具体的には、集団主義の文化的傾向の大きく異なる3カ国(コスタリカ・日本・オランダ)にわたり、協調的幸福感と個人差変数(例:年齢や性別、世帯収入等)との関連の文化比較を行った。この結果は、Asian Journal of Social Psychology誌に掲載された。また、協調的幸福感の個人内変化について検討するため、前年度に調査を行った日本とフィリピンにて、再検査法を用いた時系列調査を行った。この結果は、2020年度の日本社会心理学会にて学会発表した。3カ国比較については特に協調的幸福感の横断的な発達変化の文化差を、2カ国の再検査調査については特に協調的幸福感の縦断的な対人的出来事との対応関係の文化差を、それぞれ検討した。これらの結果は、本科研費研究の主題である、協調的幸福感の文化・社会環境的背景との関連、特に、協調的幸福感における個人差の問題を実証的に検討したものとして研究実績に含める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
パンデミックとそれに続く教育負担の増加によって研究代表者の研究時間に制約が生じたことや、調査対象に予定していた南米県の農村地域での感染拡大および研究協力者の安全懸念などが発生し、当初の予定より研究手法と対象者を改めなければならず調査準備に遅れが生じた。その一方で、ここまでの進捗により収集したデータを用いて、集団主義文化とされる国の中でも多様な文化として東南アジアや南米圏、日本などで調査を行い、その一部を国際誌に掲載する成果を出してもいる。したがって、これらの両面を鑑みて、やや遅れ気味の進捗とする。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は収集済のデータを更に学術論文としてアウトプットしながら、現地におけるCOVID-19の被害状況を鑑み、南米地域への調査について柔軟に対応した形で調査を進め、協調的幸福感の社会環境的要因の検討を継続する。具体的には、南米ペルーにおける農村地域での調査は、現地の感染状況が変化すれば方向転換を行う。ここでの研究は、東アジアを離れても協調的幸福感が農業的社会環境に見られるかという点を検討することである。本研究の主題として、協調的幸福感の文化・社会環境的要因を検討する別の方法として、文化が伝播するものであるという近年の文化の継承性に対する理解を前提に、南米ペルーに在住の日系移民の子孫を対象とした協調的幸福感の調査を再計画している。彼ら自身は農業者ではないが、日本文化を世代的に伝えているペルー人であり、それゆえ、彼らの幸福感は、移民でないペルー人と比較して、より東アジア的な自己や幸福感の特徴を示す可能性がある。つまり、現在の社会環境と協調的幸福感との関係を検討するという以前の目的から、過去から伝わる文化と協調的幸福感との関係を検討する方法へと変更する。日系移民の子孫には現地研究協力者を通じてアクセスし、対象者らのパンデミック後の生活に配慮しながら、上記の検討を行う計画である。
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Causes of Carryover |
2020年度はコロナ禍における研究遅延(前述)のため、当初計画していたペルー国内における農村地域への共同研究者派遣(人件費および旅費)や現地調査にかかる費用が支出不能となったため、未使用額が生じた。次年度は一部調査計画を変更し、これらを同国で支出した研究ができるよう調整中である。
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