2021 Fiscal Year Research-status Report
Studies on the cultural, socio-environmental factors of the interdependent happiness.
Project/Area Number |
18K03027
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
一言 英文 関西学院大学, 文学部, 准教授 (80752641)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 協調的幸福感 / COVID-19 / 文化的自己観 / 感染忌避 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、調査対象としていた南米ペルーにおける調査が、現地パンデミックの悪化に伴い延期となったことから、新たな調査対象としてフランスを設け、現地協力者と日本との間で、協調的幸福感の機能としてのCOVID-19症状抑制に関する研究を実施した。この調査は、パンデミック化の健康維持政策として、一般的には疫学的・医学的対処が推進されているとこと、文化的行動パターンとしての集団主義が感染抑制につながるとする先行知見をふまえ、集団主義文化における感染を忌避する傾向、および、身近な他者とつながることの幸福感である協調的幸福感に、感染症諸症状を負に説明する効果があるか検討した。これは、本プロジェクトにおける協調的幸福感の妥当性の検討として、あらたに生じたCOVID-19パンデミックを用いて国際比較を行ったものとして位置づけられる。調査および分析の結果、集団主義的な感染忌避、および、協調的幸福感の双方に感染症抑制的な説明関係がみられること、および、特に前者については日本で効果が大きく、また、後者については日本文化的な自己観によって協調的幸福感が説明される傾向に日本でより強いものが確認された。また、同様の再現知見を、平行して実施した日米比較でも得た。この研究や関連の知見は、査読付き学術誌に掲載され、国内・国際学会にて招待講演として発表するに至った。
Hitokoto, H. (2022). Cultural and individual level correlates of the interdependent happiness. International conference -Between narcissism and entitlement 2. Cardinal Stefan Wyszynski University, Warsaw, Poland. Hitokoto, H., & Adeclas, J. (2022). Harmony and Aversion in the Face of a Pandemic. Japanese Psychological Research, 64, 222-243. 一言英文 (2021). 感染症症状に対する個人的・関係的幸福の効果-パンデミック下の日米比較を通して-. 第62回日本社会心理学会大会.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
協調的幸福感尺度の妥当性や社会・個人差を検討することを主な目的とする本プロジェクトでは、これまで複数の学術雑誌への掲載と、国内・国際大会での発表および招待講演を実績としてきた。コロナウィルスによるパンデミックにより、当初のサンプル計画からやや比較国や集団に変更を余儀なくされたものの、当初の目的である、社会・国文化比較により尺度の妥当性の検討を実施することができている。ただし、調査対象としていた南米ペルーにおける調査が、現地パンデミックの悪化に伴い延期となったことから、フランスなど新たな共同研究先を探索し、尺度の妥当性研究を別途デザインして実施することなどが求められたため、当初の計画から遅れが生じている。1年の期間延長を申請し、当初の計画に照らして未踏である研究の実施や、その出版を引き続き目指す。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き協調的幸福感尺度の妥当性および社会環境との関連を検討するため、未だ感染症の脅威が冷めやらぬアジア圏内における協調的幸福感とその健康に関する個人差の検討を続ける。特に、共同研究者の協力のもと、Hitokoto & Adeclas (2022)で示された協調的幸福感と健康指標との関連について韓国や日本の社会人を対象とした文化差を説明するための研究を行う。現在の仮説として、協調的幸福感が感染症と負の関係にあることには、孤独感の低減と、身近な他者とのテレコミュニケーション利用があったものと考えている。すなわち、協調的幸福感の健康的な効果は、身近な他者との積極的な関係維持行動があると見ている。このことは、協調的自己によって説明されてきた文化の違いについて、それを社会行動の違いという具体的な行動変数で説明するという点で、近年の社会生態環境に着目した文化の説明原理に貢献するものである。それと同時に、いかに文化が、形成された自己と幸福概念に誘導された社会行動を介し、我々の健康を維持しているのか、その具体的なプロセスについて言及する学術的な貢献がある。
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Causes of Carryover |
コロナウィルスによるパンデミックにより、当初のサンプル計画からやや比較国や集団に変更を余儀なくされたことが主な理由である。上記のとおり、アジア圏内における協調的幸福感の国際比較調査や、国内の多様な地域に在住する社会人を対象として、引き続き本プロジェクトの目的である協調的幸福感の協調的幸福感の文化・社会環境的要因の検討を継続する計画である。また、既存のデータを論文投稿する際の英文校閲、および、国際調査を行う際のインターネット調査実施費として残金を使用する予定である。
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Research Products
(6 results)