2020 Fiscal Year Research-status Report
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18K03031
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
中島 伸子 新潟大学, 人文社会科学系, 教授 (40293188)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 痛みの理解 / 病気理解 / 素朴生物学 / 心身の相互性理解 / 治療についての理解 / ナラティブ・アプローチ / 小児医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は次の3点を明らかにし、痛みについての理解と表現の発達およびそれに対する大人の対応についての基礎的資料を提供することを目的とした。(1)痛みの因果理解の発達に関しては、「魔術的思考の発達」という観点から、前年度までのデータをまとめ、日本心理学会公募シンポジウム「魔術的思考の発達から伝統的発達観を問い直す」において次のような話題提供を行った。痛みのコントロールには医薬品使用、心理的方略が効果を持つとされる一方で、日常生活においては「痛いの痛いの飛んでいけ」などのおまじないが用いられることは多い。本話題提供では、おまじないが痛みの緩和効果を有するとの信念は、小学生と比較して、幼児や大人では比較的強く見られることを示す研究結果を報告し、科学的知識と魔術的信念の共存モデルという点から議論した。(2)痛みに関する言語表現の理解の発達と大人の対応に関しては、昨年度中に収集したデータ(1歳から9歳の子どもを持つ644名の保護者を対象とした質問紙調査)を分析するための方法を検討した。特に大量の自由回答記述部分の分析には、テキストマイニング法が適していることがわかり、その方法を用いて分析途中である。(3)小児医療現場におけるナラティブ・アプローチの解明に関しては、2016年に実施した子どもの医療として先進的な取り組みをしている小児医療施設に勤務する10名の看護師を対象としたヒアリング調査での語りを分析し、日本乳幼児医学・心理学会大会シンポジウム「医療におけるナラティブとエビデンス」において、次のような話題提供を行った。子どもへの対応においてナラティブ・アプローチに近いスタンスを読み取ることができること、さらに、子どもの病気や治療の意味づけの際に生まれる親子をめぐる葛藤、医師に対する葛藤、施設体制に対する葛藤およびそれに対する苦悩や不満を読み取ることができることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
コロナ感染により、園や学校等で子どもを対象とした調査を依頼することが極めて難しい状況となった。そのため、予定していた「痛みのコントロールの発達」と「痛みに対するコーピングの理解の発達」の検討について、幼児、児童、生徒を対象とした個別調査が実施できなかった。また「痛みに関する言語理解・表出の発達」の検討について、収集したデータの分析を完了する予定であったが、分析方法の検討に時間がかかり、完了できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ感染状況を鑑みながら、以下2点から研究をさらに進める。(1) 痛みのコントロールについての理解:今後は幼児、中学生を対象とした調査を実施し、過去の収集した小学生、大学生のデータと合わせて分析することで発達的変化を検討する。可能な限り、オンラインによる調査も視野にいれる。(2)痛みに関する言語理解・表出の発達:すでに収集した1歳から9歳の子どもを持つ保護者644名分のデータについて、今年度検討した質的分析法を用いて、発達的変化を検討する予定である。
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Causes of Carryover |
(1)2020年度においては前年度の調査結果を海外で開催される国際学会(ICP)で発表する予定であったが、これが2021年度に延期となったため、参加費、旅費分が余ることとなった。 (2)コロナ感染状況が収まらない中、学校園の園児、児童、生徒を対象とした調査を行うことができなかった。調査実施時やデータ分析時の調査補助員への謝金分が余ることとなった。
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