2018 Fiscal Year Research-status Report
幼児期における「内容と目的に応じた教示行為」の発達とその認知的基盤
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18K03037
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 孝司 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10221920)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 教示行為 / 幼児 |
Outline of Annual Research Achievements |
発達心理学において,幼児の教示行為に関心が寄せられているが,その発達的変化について十分に明らかにされていない。本研究では,何を,どのような目的で教えるのかによって,幼児は教示方略をいかに変化させるのかを検討する。2018年度は特に,教える目的を1)速やかな課題達成の援助と2)学習者が教えられるように熟達することに分けて,幼児の教え方にどのような違いがみられるのかを調べた。 具体的には次のような研究を実施した。1)対象児:保育園年中児および年長児34名(女児15名,男児19名。平均月齢65.6か月,範囲54か月~76か月)。対象児は,速やかな課題達成群と教示可能熟達群に分けた。2)手続き:実験補助者が操作するパンダのパペットに,折り紙のチューリップを教える場面を設定した。最初に,そのパペットが登場する,次の内容のビデオ映像を対象児に視聴させた。A)速やかな課題達成群:パペットは先生から折り紙のチューリップをすぐにもってくるように頼まれるが,その作り方を知らない。B)教示可能熟達群:パペットは先生から折り紙のチューリップを年少児に教えるように頼まれるが,その作り方を知らない。ビデオ視聴後,対象児にパペットの状況を確認した上で,チューリップの作り方を教えるように教示した(対象児による教示は2回実施)。 両群とも年齢クラスに関わらず,自分が折り紙を折ってみせるという教示方略をとっていた。他方,教示可能熟達群では,学習者のパペットの様子をモニタリングする頻度が高く,あわせて自分のペースで折ってしまわずに,学習者の進行に合わせて待つことが確認できた。また,こうした傾向は2回目の教示でより顕著になった。 以上の結果から,幼児は,学習者の状況に応じて,より学習者を意識した教示方略に調整することが示唆され,幼児期の教示行為について検討する材料を蓄積できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初,子どもが教える内容として,折り紙のような非言語的技能だけではなく,言語的知識も取り上げる予定であったが,協力してもらう子どもたちへの負担と保育現場に入れる時間を考慮した結果,非言語的技能のみを扱うことにした。また,学習プロセスのメタ的理解について別立ての調査を実施しなかったが,対象児に教示を繰り返し行わせることで,学習プロセスの理解を直接検討することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度に実施した研究データをさらに精査して,学習者の遂行状況をモニタリングするプロセスと教示方略の調整について検討して,研究成果を発表する。また,その結果を受けて,他者の課題遂行状況から,学習内容(言語的知識,非言語的技能)の理解度や熟達度を推測して,学習の目的に応じてどの程度の教示が必要となるのかを判断するプロセスをさらに明らかにしていきたい。
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Causes of Carryover |
保育現場における研究調査期間が短縮された結果,それにかかる旅費と研究補助の謝金が予定より若干少なくなったためである。 研究の遂行に必要となる図書などの物品の購入や,成果をまとまた論文の英文校閲などに使用する予定である。
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Research Products
(5 results)