2019 Fiscal Year Research-status Report
幼児期における「内容と目的に応じた教示行為」の発達とその認知的基盤
Project/Area Number |
18K03037
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 孝司 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10221920)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 教示行為 / 幼児 / 抑制機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,幼児の教示行為の調整プロセスを検討することを目的にしている。2019年度は,幼児が教示の目的に応じていかに教えるのかという点に加えて,さらに,教示を繰り返すことで教え方を変化させるプロセスを明らかにして,その認知的基盤について検討することを目指した。 保育園年中児と年長児64名を対象に,パペットに折り紙のチューリップを教えることを求めた。その際,対象児は2群に分けて,一方にはパペットは速やかにチューリップを手に入れたいと思っているというストーリー(速やかな課題達成条件)を,他方には,パペットは他者にチューリップの作り方を教えるために熟達する必要があるというストーリー(教示可能熟達群)を視聴させた。教示場面は計4回設定し,第1教示と第3教示では対象児だけが折り紙を持って教え,第2教示と第4教示はパペットだけに折り紙が渡され,対象児は側方から教示することが求められた。 主な結果は次の通りである。1)2つの条件による教示方法の違いを予測していたが,教えるための発話数と,パペットが折っているところに介入して代わりに折る反応には条件差は認められなかった。2)教示を繰り返すことで,発話数と間接的な教示方略は増加することが明らかになった。他方,パペットに代わって折る反応は,年長児の場合だけ減少する傾向が認められ,教示を重ねる中で,学習者を主体にした教え方に調整していた。3)パペットの代行をする方略は,抑制機能を見る赤青課題によって負の影響を受けていることが示された。幼児は,学習者がすぐに熟達できない場合,情報を付加していき,年長児においては直接的な介入を避けることがわかった。 また,学習者の状態に応じた教示方法の調整が重要であることが示唆されたため,学習者の状態として能力に注目して,能力の差違に基づいて教えるべき人物を選択する課題を追加して実施した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
教示の目的に応じた教示方法の調整について予測の確認はできなかったが,幼児の教示では,学習者の状態に応じた調整が重要な要素であることが示唆され,学習者(他者)の能力の理解と教示の関連について,追加の研究を行った。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度に追加した研究データを分析して,幼児はどのように他者の能力を理解して教えるべき相手を特定しているのかを明らかにする。COVID-19の拡大状況を見て,可能ならば保育園での補足実験をするが,対象児の安全を優先する立場から実施を見合わせることは想定している。その際は,今まで得られている資料をまとめ,関連研究論文を整理し直して,研究成果を公表する予定である。
|
Causes of Carryover |
保育現場における研究調査が予定より短縮され,それにかかる経費と研究補助謝金が少なくなった。また,COVID-19感染拡大の影響を受けて,予定していた学会や研究会が中止されて旅費の支出がなくなったためである。 研究遂行に必要となる図書などの物品の購入や,成果をまとめて論文化するための校閲料金などに使用する予定である。
|
Research Products
(3 results)