2021 Fiscal Year Research-status Report
幼児期における「内容と目的に応じた教示行為」の発達とその認知的基盤
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18K03037
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
木下 孝司 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 教授 (10221920)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 教示行為 / 幼児 / 抑制機能 |
Outline of Annual Research Achievements |
幼児は,大人から教えられるだけではなく,自身も他者に自分の知識や技能を積極的に教えていく。効果的に他者に教えるためには,相手の知識や技能の状態を読み取り,相手が何のために学習しようとしているのかに応じて教え方を調整する必要がある。本年度は,2018年度に収集した実験データを再分析し,研究報告をまとめた。4,5歳児を対象にして,実験補助者が操作するパペットに折り紙のチューリップを教える場面を設定し,その際,対象児を,完成物を速やかに教える必要がある迅速教示群と,パペットが他者に教えられるように熟達させる必要がある熟達教示群に分けた。1回目の教示場面では両群で教え方に差違は認められなかったが,2回目では,熟達教示群において,学習者の作業を待つ傾向があった。幼児も,学習者が熟達するために,学習者を主体にした教え方をすることが確認できた。2018年度の実験方法では,対象児と学習者に同時に折り紙を渡したのに対して,2019年度では,二者に同時に渡さないで教示場面を設定した。これまでの研究結果を比較する中で,幼児,特に4歳児にとって,自分も折りながら他者に教える状況は,情報処理容量的に困難である可能性がわかった。 教える目的による教示方法の調整について,明確な違いが見られなかったことに関しては,さらに研究方法を工夫する必要がある。たとえば,ある対象物はどれかを指し示して教示するような場合と,その機能や構成プロセスを教示する場合のように,教える内容との関連で,伝える情報量を調整することにさらに注目していきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
これまでの実験方法の不備を改善し,研究知見を補強するために,保育現場で追加の実験を行う予定であったが,2021年度も,新型コロナ感染症拡大によって保育現場に入ることができなかった。そのため,予定した実験を実施することができず,本研究を完遂できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症拡大が収まり,保育現場での研究が再開できた場合,実施予定であった,学習者の能力評価に応じた教示の必要性に関する認識を調べる実験を実施する。また,保育現場での研究再開に関する判断は,依頼する現場と相談の上,早めに行うようにしたい。なお,保育現場における対面での研究が困難と判断する場合に備えて,幼児の日常生活における教示に関するインターネット調査を計画し,その調査結果とこれまでの研究知見を総合して,幼児期における教示の発達的意義を検討する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症によって保育現場での研究調査が実施できなかったこと,および関連学会がオンライン開催となったため,研究補助謝金や旅費の支出がなくなったためである。 保育現場における研究調査(研究補助謝金など),オンラインを利用した調査に要する費用(調査協力謝金など),および論文執筆にかかわる経費(論文校閲費など)として利用する予定である。
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