2020 Fiscal Year Research-status Report
集団の中での心を感じ取る:「対集団」における生徒理解とその介入
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18K03041
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
中島 健一郎 広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (20587480)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福井 謙一郎 長崎女子短期大学, その他部局等, 講師(移行) (80767541)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 生徒理解 / 共感の正確性 / 批判的思考 / 社会経済的地位 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は昨年度得られた知見の頑健さを確認するために、昨年度と同一の教員養成校に所属する別の女子大学生を対象にした追試を実施した。この際、動画刺激の内容を教師の実態把握力解析ツール(Wits)の理論的背景に近くなるように、他者理解の題材のためのテストの設問数を4・5問に、そして理解度を推測する対象の人数を100名超に変更した。73名の女子大学生を対象に、一斉教示・個別回答の集団実験を行った結果、昨年度の知見とは異なり、批判的思考の有意な効果は認められなかった。この結果をうけ、他の変数について探索的な検討を行ったところ、テスト成績の良い参加者ほど、Witsのαの得点が1に近づくこと、すなわち「一対多」の他者理解が正確なことが示された。さらにテスト成績と、参加者の家庭の社会経済的地位、日本社会における生活水準の向上機会の認知との交互作用が有意であり、先のテスト成績の効果は、家庭の社会経済的地位が低く、生活水準を変える機会があると考えている参加者に限られることが示された。この実験結果について、昨年度に引き続き、植阪友理准教授(東京大学)の研究グループの研究会で発表を行い、今後の研究展開の方向性について議論を行った。議論を通して、追加データの収集と分析計画、そして既存のデータの再分析のための示唆を得た。今年度の成果として批判的思考の効果は確認できなかったものの、研究を展開していくための具体的な方向性を得ることができた。その点で意義のあるものだったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルス対応に迫られる中で,教員養成校の女子大学生を対象とした集団を実験を実施し、その結果について関連する研究グループで発表を行ったこと、そして追加データの収集と分析計画、既存のデータの再分析のための示唆を得たことから本申請課題は着実に進展している。一方で申請時に予定していた研究の遂行までには至っていない。加えて今年度の成果は探索的な検討によって得られたものであり、さらなる追試が必要だと考えていることから「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
批判的思考や社会経済的地位に関連する指標に着目した追試を計画している。現時点では、教員養成校の学生を対象とした一斉教示・個別回答の集団実験を予定しているが、現職の教員を対象にしたデータ収集や、複数の養成校での実験を行うことも検討している。しかし、昨年度に引き続き新型コロナウィルス対応が求められ、さらにその内容が状況に応じて変わることから、オンラインでのデータ収集へと変更することをも視野に入れている。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、追加のデータ収集や研究出張を計画していたものの、新型コロナウィルス対応に伴い、予定通りに遂行できなかったためである。昨年度と同様に今年度も集団実験を計画しているが、状況次第ではオンラインでのデータ収集へと変更する想定をしている。使用額の超過分をこの費用に充てることで、着実なデータ収集と成果報告へとつなげる計画である。
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Research Products
(6 results)