2018 Fiscal Year Research-status Report
Study-abroad for seniors in the era of 100-year life society
Project/Area Number |
18K03044
|
Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
小柳 志津 首都大学東京, 国際センター, 准教授 (20376990)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
直井 岳人 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (10341075)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | シニア留学 / 異文化接触 / 異文化コミュニケーション / 観光学 / 認知変容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「シニア期の留学(異文化接触)が人生観等の認知的側面にもたらす影響を明らかにし、マルチステージ化する人生での生涯教育としてのシニア留学の可能性を考える」ことを目的として、国内外での調査を行っている。 2018年度前半は、日本国内調査として特にシニア留学を扱うエージェントの聞取り調査を実施し、留学者の現状やプログラム内容を把握するとともに、海外調査時に必要なコンタクト先や留学者の紹介を依頼した。近年は50代以上のシニア、特に女性が増えていること、期間は2週間から3カ月が多く、シニア留学の需要が拡大していることが明らかとなり、この研究の成果が期待される。 後半は、自身のサバティカルに伴いマルタ大学観光文化研究所の客員研究員として1年間在籍することが可能となり、シニア留学生受入に力を入れる英語学校が多いマルタ共和国の現状を調査中である。マルタの英語学校の統括団体であるFELTOMや、英語学校7校のプログラム担当者や日本人留学生担当者等と聞取り調査を実施し、マルタにおけるシニア留学の全体像を把握した。加えて、日本人シニア留学生10数名との面接調査を実施し、留学の動機や心理面での変化、マルタでの生活の様子などの把握に努めている。また、滞在環境としての学校や宿泊先、学校が主催するアクティビティの様子などの質的データを収集している。これまでの調査内容から、人生経験を重ね“自分”が確立されているシニアの場合、留学の影響や意義については従来の若者を対象とした研究とは異なる理論やアプローチの必要性が見られ、この点を解明することでシニア期の留学をより有効にできると考える。 マルタの英語学校ではシニア向けのプログラムに英語学習プラスαとしてマルタ観光をアクティビティに組込み、各国シニアに人気となっており、マルタ大学観光文化研究所において観光学の視座の理解を進めて文化心理学との両者から考察を進めている
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では海外調査は数回に分けてマルタや英国で実施する予定でいたが、サバティカルの全期間をマルタ大学の客員研究員として在籍できることとなったことが進捗に大きく寄与している。マルタ共和国に長期滞在し、文化や観光資源、公用語としての英語の役割など、マルタの社会を体感することができ、シニアがマルタに留学することについて深く調査する絶好の機会となっている。また、当地に在住することにより現地の英語学校の担当者との信頼関係やネットワークを築くことができ、面接の対象者を紹介してもらうことが可能となった点は非常に大きい。加えて、自身も異文化滞在を経験することで文化や海外滞在について新たな視点から考える機会となり、心理側面の分析に繋がる洞察も得られている。 一方で、日本を離れ異文化に浸かることにより、日本での発表機会や学会への参加から離れていることもあり、アウトプットの面では進展が少ない。但し、質的データによる分析を目指しているので、インプットやデータ収集に時間がかかることは想定の範囲内である。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度前半は引き続きマルタに滞在し、海外調査を進める予定である。特に、留学中のシニアとの面接と留学の場の参与観察を行う。加えて学校や宿泊先等の生活滞在環境から留学先としてのマルタ社会を含めた環境要因について調査する。特に昨今はマルタでもオーバーツーリズムが問題となっており、外国人観光客としての留学生への受入れ側の態度も考慮すべき点である。マルタにおける留学先の教育機関の聞取り調査は大方実施済みで、2019年度は英国(ロンドン、ボーンマス)での調査を予定している。 日本に戻る年度の後半では、留学帰国者、特にマルタで面接したシニア数名と再度面接を行い、留学後の変化や留学を振り返って考えることなどを調査する。それにより、シニア期の人生における留学の意味をより深く考察することができると考える。 2019年度後半から2020年度には、一連の留学者や教育機関、環境要因に関するデータに基づき、シニア期の異文化接触と認知変容について分析を行う。特に、長年調査してきた10代、20代の青年期・キャリア形成期での留学との相違や、シニア期に留学する意義について考察を行う。それに基づき、より有意義な留学となるようなシニア留学プログラムを検討・開発し、シニア留学に関する情報提供や留学前の準備などの啓蒙を実施できればと考える。 本研究は留学という実践の場を調査するものであるので、研究成果も実践に直結した提案を目指しており、対象者に直接伝わる場で発信していきたい。 尚、計画の変更ではないが、「シニア」という呼称が的確かどうか、今一度検討したい。
|
Causes of Carryover |
2018年度はスタートアップであったため研究分担者の担当内容が少なく、次年度に多くなると見込まれたため。
|