2021 Fiscal Year Research-status Report
適応上の問題を抱える生徒に対する援助的な視点に基づいた『教育臨床的進路指導』
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18K03059
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
磯邉 聡 千葉大学, 教育学部, 准教授 (90305102)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 進路指導 / チーム支援 / 臨床倫理 / 教育相談 / 不適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、過去3年間で得られた知見を踏まえつつ『教育臨床的進路指導』の概念構築をより幅広い視点から行うための調査を継続して実施し、その結果を整理する予定であったが、引き続きコロナ禍のため出張を伴う視察や情報収集を十分に行うことができなかった。代替方策として、オンライン形式での情報収集や意見交換を行うとともに、これまでに蓄積された事例の分析を幅広い視点から実施した。 その結果、①個別の教育的ニーズを有する児童生徒への進路支援の重要性と課題、②チーム支援を行う際の倫理上の課題、の存在が新たに明らかになった。 適応上の課題を抱える児童生徒の中には、発達のアンバランスさや精神疾患等、就学に当たってさまざまな支援が求められることも少なくない。これらの児童生徒に対して進路支援を行う際は、不適応による傷つきへの配慮に加えて、個別の教育的ニーズに対する統合的な支援も必要となるがその体制は十分とは言えない。 また、これらの進路支援は個人で行いうるものではなく自ずと「チーム支援」が求められるが、それぞれの立場によって「最適解」とされる支援の理念やゴールに異同があることが示された。これは他職種による「チーム支援」が潜在的に内包する葛藤やジレンマであり、これを解消するためにはそれぞれの職種の礎となっている行動原則の再確認とすり合わせが必要となる。教育現場において教育職、心理職、福祉職、医療職、司法職といった他職種が有機的に連携する際の根幹をなす、いわば『教育における臨床倫理』の醸成と共有が喫緊の課題であることが示唆された。 今年度の研究の結果、適応上の課題を抱える生徒に対する援助的な視点に基づいた『教育臨床的進路指導』のさらなる概念整理を進めることができ、特に『教育における臨床倫理』の必要性を見いだすことができたのは大きな収穫であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はコロナ禍にあって、さまざまな代替手段を用いながら、本研究の鍵概念である『教育臨床的進路指導』を構成する複数の観点や視座をさらに深く検討することができた。特に、個別の教育的ニーズを有する児童生徒への進路指導の課題と重要性、そして『教育における臨床倫理』の醸成と共有、について新たな知見を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のようにコロナ禍にあって当初計画した対面方式の視察等を実施することができなかった。そこで研究を1年間延長し、これまで蓄積されてきた知見をまとめ、『教育臨床的進路指導』についての概念提示と、これらを効果的に実践するための臨床上の工夫や留意点等について提言を行いたい。その際は、今年度得られた知見を加味しつつ、引きつづきさまざまな代替手段等を活用するとともに、状況を勘案しながら視察やインタビュー、さらなる事例収集を行い、知見の精緻化を試みたい。
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Causes of Carryover |
コロナ禍および、データ整理等の謝金を必要とする業務が、当初の予定よりもスムースに行われたため、低い執行率にとどまった。 なお、このことによって全体的な研究遂行に支障が生じることはない。
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Research Products
(2 results)