2018 Fiscal Year Research-status Report
Developmental psychological study about mindreading related to social cognition
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18K03065
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
林 創 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (80437178)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 児童期 / 社会性 / バイアス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,幼児期から児童期の子どもを対象に,「子どもの社会性を支える『察する』心の発達心理学的研究」に着目し,その発達過程を実証的な研究によって検討するものである。 平成30年度は,社会性を支える「察する」心が働く上で,どの程度のズレが生じるのかを,「自己中心性バイアス」の発達的変化に着目して検討した。私たちは幼児期の4~5歳頃から,他者の視点に立ち,明示的に心の状態を理解するようになるが,自分の有する知識によって,他者の心的状態をとらえてしまう自己中心性バイアスが残ることが知られている。これまで,自己中心性バイアスの存在は,「他者の見えや誤信念の理解」といった認知的領域での研究が主であった。そこで,本研究では,「他者の感情の理解」という情動的領域でも,同様に自己中心性バイアスが見られるどうかを検討した。 具体的には,児童期の子どもと(その比較対象となる)高校生,大人を対象に,主人公が相手の行為で被害を受けて悲しむ「ネガティブ状況」と,助けてもらって喜ぶ「ポジティブ状況」について,それぞれ相手の行動が意図的なものと偶発的なものを用意した。知識あり条件では,主人公が相手を見ていたので,相手の行為が意図的か偶発的かを知っている状況とした。知識なし条件は,主人公がその場にいなかったので,相手の行為が意図的か偶発的かを知らない状況とした。その結果,特に児童期の子どもにおいて,知識あり条件のみならず,知識なし条件においても,意図的に被害受けた(助けてもらった)方が,偶発的に被害を受けた(助けてもらった場合)に比べて,主人公はより悲しい(より嬉しい)と判断した。 以上より,過去の研究で知られていた認知的領域のみならず,本研究によって情動的領域においても,自己中心性バイアスが生じることが明らかになり,察する心が適切に働くために,バイアスへの意識づけが必要となることを示唆できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の目的とした「察する」心が働く上での「自己中心性バイアス」の存在の発達的変化について,児童期を中心にデータを収集でき,論文にまとめ,投稿ができたことから,おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
「おおむね順調に進展している」と判断されたものの,今後も「察する」心について,当初の目的に沿いつつ,多面的に調査を続けることで,子どもの社会性の発達について,さらに明らかにしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初の参加を考えていた成果報告のための国際学会について,校務と重なり,出張が困難となったため,その旅費に相当する分が未使用となったためである。 研究を遂行する上で必要となる物品や書籍の購入,および成果をまとめた論文の英文校閲費などに使用する。また,研究成果の発表のための国際学会の出張旅費としても使用する予定である。
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