2018 Fiscal Year Research-status Report
青年期成人の乳児の情動認知における生理的・心理的反応の解明
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18K03072
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Research Institution | Tohoku Fukushi University |
Principal Investigator |
庭野 賀津子 東北福祉大学, 教育学部, 教授 (30458202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
庭野 道夫 東北福祉大学, 感性福祉研究所, 教授 (20134075)
田邊 素子 東北福祉大学, 健康科学部, 准教授 (30513618)
茂木 成友 東北福祉大学, 教育学部, 講師 (50761029)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 乳児の顔表情 / 青年期 / 脳活動 / 生理学指標 / NIRS / 心拍 / 皮膚電位 / 自律神経活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、育児経験のない青年期成人において、乳児の顔表情から情動を認知する際の生理的・心理的反応について、認知科学的アプローチによって解明することを目的としている。言語獲得前の乳児の顔の表情は、養育者が乳児の情動を的確に判断し、その情動に対応した適切な養育行動を取る上での重要な情報となる。しかし、快・不快が明確ではない曖昧表情の場合は情動認知が難しく、育児未経験者の認知の仕方には生理学的・心理学的要因が影響すると考えられる。そこで、生理学的指標として、近赤外線分光法(NIRS)、皮膚電位、心電図を、また、心理学的指標として性格検査を用いて、青年期成人の乳児の曖昧表情の認知に関連する諸要因の検討を進めている。さらに、乳児の情動認知における生理的・心理的反応の男女差も検討している。生理的反応は自律神経の働きと関連しており、本研究の成果は生理心理学的研究として位置づけられる。本研究は、「研究1.乳児の表情認知における青年期成人の脳反応と性格特性及び性別との関連の解明」「研究2.乳児の表情認知によって喚起される青年期成人の脳神経活動と自律神経活動の解明」の2件の研究から構成されている。初年度は研究1に取り組み、その成果の一部を日本発達心理学会で発表した。また、研究1の成果について、現在論文作成中である。本研究によって得られる知見は、青年期の親性発達支援や、乳幼児の育児中の親への支援、虐待防止等へ向けた基礎資料となることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度である平成30年度の前半はパイロットスタディを実施した。乳児の動画を記録して刺激課題を作成し、実際に数名の被験者の協力を得ながら近赤外線分光法装置(NIRS)による脳血流動態を調べた。また、同時に乳児に対する発話の音響的特徴を調べるため、発話中の音声を記録して音響分析を行った。さらに、性格特性の影響との関連を調べるため、心理検査も実施した。パイロットスタディの結果、実験方法が目的に対して適切なものであることが確認できたので、年度後半に本実験を行い、若年成人の被験者40名分のデータを取り、分析を行った。研究の結果、育児経験の無い若年成人は、乳児の示す表情によって、脳の賦活する部位が異なること、また、不安傾向の強い若年成人は、乳児が泣いている場面を視聴するときと、泣いている乳児に話しかけるときとでは、脳の賦活部位が異なる事が明らかとなった。その成果の一部を、3月に開催された日本発達心理学会で発表した。 また、今年度後半からは、前述の実験と並行してNIRS及び心電図と皮膚電位を用いた、脳神経活動と自律神経活動の解明に向けた研究のデザインの内容や手順の確認をした。また、刺激素材を作成するため、乳児数名の保護者の協力を得て撮影を行った。次年度では、パイロットスタディを実施して実験方法の妥当性を確認した上で、被験者のリクルートをして本実験に臨む予定である。本研究の結果は育児経験のない青年期の高校生や大学生に対する育児教育、あるいは育児中の親のストレス予測の基礎資料となると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度後半より準備を進めている脳神経活動と自律神経活動を研究するための実験について、次年度に、パイロットスタディを実施して実験方法の妥当性を確認した上で、被験者のリクルートをして本実験に臨む予定である。そして、次年度中にその研究成果を国内学会で発表するとともに、最終年度における国際学会での発表と、論文発表に向けた準備を進める。本研究の結果は育児経験のない青年期の高校生や大学生に対する育児教育、あるいは育児中の親のストレス予測の基礎資料となると考えられる。
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Causes of Carryover |
申請時においては、平成30年度に研究1の実施、及び研究2の準備を進めることとしており、研究2で用いる設備備品費や消耗品費、人件費・謝金を平成30年度の研究経費に計上していたが、研究1の実施やデータ解析に予定より時間がかかったため、研究2の分の経費執行まで進まなかった。そのため、平成30年度の経費に31年度の経費を合わせて、31年度に使用する予定である。使用計画として、研究2の被験者謝金、実験用消耗品、設備備品、実験補助アルバイト、データ分析補助アルバイト代、成果発表旅費に使用することとする。
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