2021 Fiscal Year Research-status Report
幼児の食物の社会的学習:大人から「健康的な食物」を仲間から「美味しい食物」を学ぶ
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18K03078
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Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
中道 直子 東洋大学, ライフデザイン学部, 教授 (10389926)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 幼児 / 食物 / 他者の証言 / 社会的学習 / 認知発達 |
Outline of Annual Research Achievements |
幼児はどのようにして食物の美味しさや健康度について学ぶのだろうか?食物の性質について学ぶ方法の1つは,身近な信頼できる他者の食行動や証言を観察することであり,これを食物の社会的学習と言う。食物の社会的学習は,幼児にとって効率的かつ安全に食物の美味しさや健康度を知ることができる重要な学習手段である。最近の研究は,幼児が食物について社会的に学習することを示しつつある。本研究では,幼児が誰からどのように食物の美味しさや健康度について学ぶのかを検討した。2021年度は次の実績を得た。
1.「幼児の視覚的に馴染みのない食物の選択における他者の証言の影響」に関する実験論文の採択 上記テーマに関する実験結果をまとめた論文がJournal of Cognition and Development誌に採択された。実験結果は,(1)幼児が食べるのを拒むような見た目が馴染みのない食物でも,他者が「美味しい」と証言するのを聞くとそれを食べたがること,(2)とりわけ,大人より自分と年の近い仲間の「美味しい」という証言の影響力が強いこと,(3)他者が「体に良い」と証言するのを聞いても,幼児は馴染みのない食物を食べたがらないこと,を示した。 2.「幼児期の食物の社会的学習に関する展望論文」の執筆 先行研究のレビューを通して,幼児の食物の社会的学習において,情報の種類による選択性と,情報提供者による選択性の,2つの選択性が見られることを明らかにした。次に,これらの2つの選択性を生じさせる1つの動機について議論した。さらに,これらの2つの選択性が,幼児の食行動や嗜好や健康上の問題に及ぼす影響について考察した。最後に,食物の社会的学習のメカニズムをさらに解明するための今後の研究の方向性について提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2020年度に国際学会誌へ投稿していた論文が,2021年度に無事に採択された。また,保育所・幼稚園での新型コロナウィルス感染拡大に伴い,予定していた幼児を対象とする実験を実施することができなかったが,その代わりに展望論文を執筆することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
幼児期の食物の社会的学習に関する展望論文を投稿し,採択させる。なお,採択が困難となる場合は,参加している研究会等において,他の研究者から必要なアドバイスや助言をもらう。
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Causes of Carryover |
2021年度は,コロナウィルス感染症の拡大により,予定していた実験ができなかった。またほとんどの国際学会や国内学会がいずれもオンライン開催となり,交通費や宿泊費を必要としなかった。これらの理由により,次年度使用額が生じた。 2022年度は,展望論文の投稿・採択のために必要な書籍代,投稿料などの経費を使用する。また,国内外での研究発表のために,参加費や旅費,英文校閲費などを使用する予定である。
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