2019 Fiscal Year Research-status Report
状況に自己を調和させる二次的コントロールの戦略的機能と生涯発達
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18K03081
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Research Institution | Jin-ai University |
Principal Investigator |
竹村 明子 仁愛大学, 人間学部, 准教授 (80526666)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 二次的コントロール / 調和 / 生涯発達 / 受容 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,人生で直面する思うようにならない状況において,状況に自己を調和させる努力を表す二次的コントロール(Secondary Control)について検討するものである。具体的にはその概念構造と促進要因について明らかにする事を目的とした。特に,多くの二次的コントロール研究が,環境をコントロールすることが困難な状況において目標を諦めることでコントロール感の維持や自我を防衛する機能(例,他のコントロール可能な目標に切り替えることで自分には能力がある事を確認し続けること)に焦点を当てている事に対して,本研究の特徴はそれを批判し,目標達成を目指し戦略的に状況へ自己を調和させようとする機能に注目して検討する事を目標としていることである。 平成30年度では,①二次的コントロール概念の先行研究をもとに多様な定義と概念構造に関する整理,②二次的コントロールの質問紙作成の予備調査,③高齢者の二次的コントロールに関する調査,などを行った。 令和元年度(平成31年度)の実施計画は,第1にこれまでの成果について学術論文としてまとめること,第2に二次的コントロールの関連要因を明らかにするために,人生の知恵との関係,辛い出来事を乗り越えた体験との関連について検討をすることであった。実施したこととして,①二次的コントロールの概念について先行研究を基に整理を行い,所属する大学の紀要論文に発表をした。②高齢者の二次的コントロールに関する調査の分析を行い,論文を執筆した。現在その内容について,二次的コントロールの第一人者に助言を求めている段階である。③二次的コントロールとその関連要因との関係について調査実施をする研究計画をしている段階である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和元年度(平成31年度)の研究計画では,二次的コントロールとその関連要因の関係について調査を実施し明らかにする予定であった。しかし実際には,二次的コントロールやその関連要因に関する先行研究の整理および,具体的に測定する方法に関する検討は行ったものの,調査実施にまでは至っていない。理由として,測定する尺度は英語尺度が多く,日本語に置き換える際,単なる邦訳ではなく,文化的違いを考慮した上で意味が変化しないよう訳する必要があり,時間がかかったためである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題の今後の推進方策について,最終年度である本年度は,二次的コントロールとその関連要因の関係について,調査実施を行い,研究成果を発表することを予定している。具体的には,インターネットを利用して多様な年代の人々を対象に二次的コントロールに関する調査を行い,人生における知恵や辛い出来事を乗り越えた体験との関連について明らかにしていく。 一方で今後の研究の方向性として,二次的コントロールの文化による違いも考慮していく必要があると考えている。第一の理由として,二次的コントロールの研究背景を挙げることができる。これまで欧米人に比べ日本人は二次的コントロールの傾向が高いと推測されてきた。しかし,比較文化の先行研究からは,上記の仮説を支持する結果が報告されている一方で,二次的コントロールを数値化して測定すると日本人の方が欧米人に比べ二次的コントロールの数値が低いという結果も報告されている。二次的コントロールの特徴を明らかにするためには,文化の中にある価値感や慣習との関連を調べる必要性が指摘されているものの,未だ明らかにはなっていなかった。第二の理由として,自分自身の研究環境の変化を挙げることができる。これまでの筆者の研究は,国内でしか実施する機会を得ることができなかった。しかし,科研費助成金を利用し国際学会に参加したことにより,他の国の研究者と交流を持つことができ,二次的コントロールの文化差について共同研究をする糸口を得ることができた。研究期間はあと1年であり短い期間で,研究課題を変更することはできないが,残りの時間で文化差比較に関する先行研究の整理や,研究計画なども含めて検討をしていく予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は下記の2点である。第一の理由は,新型コロナウイルスの影響で,参加を予定していた複数の学会において,①大会の1年間の延長,②大会は成立したが参集しないこと,③大会中止,などが生じたことである。予算として大会参加費や大会参加への旅費などを計上していたが,使用する事なく令和元年度が終わってしまった。第二に調査実施が遅れたことが挙げられる。令和元年度でインターネット・リサーチ会社を利用した調査の実施を計画し,予算として調査実施のための費用を挙げていたが,調査実施が次年度に延びたため次年度使用額が生じた。 次年度では,令和元年度で実施することができなかった調査に使用する予定である。また,新型コロナウイルスの影響で1年間延長された国際学会への旅費としても使用する予定である。
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Research Products
(2 results)