2019 Fiscal Year Research-status Report
いじめ抑止のメカニズム:モラルエージェンシーの活性化は傍観行動の低減につながるか
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18K03083
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Research Institution | Hiroshima Shudo University |
Principal Investigator |
西野 泰代 広島修道大学, 健康科学部, 教授 (40610530)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
若本 純子 山梨大学, 大学院総合研究部, 教授 (60410198)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | いじめ / 傍観者 / 仲裁者 / 道徳意識 / 教師 / 混合研究法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、道徳意識を持ちながらも、いじめに加担したり、見て見ぬふりをしたりする子どもの行動の背景にある心理的葛藤プロセスに注目し、マイクロ(個人)とマクロ(集団・状 況)の両面から、いじめ被害者を助けようと行動する仲裁者の心理的プロセスの道筋を探ることで、いじめに対する効果の高い予防や介入を可能にする知見を提供することを目指すものである。 2018年度には、小中学生を対象として約3000名から量的データを収集し、子どもたちが学校の教室の中でいじめを目撃した際にどのようにふるまうかについて、「当事者との関係性」「傍観者の有無」の違いによる12パターンの場面想定法を用いて検討した。その結果、子どもたちが見て見ぬふりをするのか、被害者を助けることにつながるような行動をとるのか、それぞれの行動の背景にある要素がいくつか浮かび上がってきた。 2019年度の調査目標として、当初は、小中学校教師を対象に、「いじめ問題を解決した」「傍観者を減らした」など実際にいじめ低減に成功した事例について聞き取り調査をおこない、個々の事例からどのような取り組みがどのような子どもたち(の状況)に功を奏したのかを検討することにしていた。これにより「取り組み」と「子どもたちの特性・文脈」との交互作用を明らかにすることができると考えたからである。実際には、聞き取り調査ではなく、集団での自由記述による調査となったが、小中高と多様な学校種、および特別支援教育に携わる先生方からの回答を得られたことで、幅広く情報を収集することができた。現在、この質的調査から得られたデータを分析中であり、2018年度に実施した量的データとの組み合わせから得られる知見を統合する作業に取り掛かるところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、3年間の研究期間において、1年目に児童生徒を対象とした量的データを収集して、「子どもたちが学校現場でいじめを目撃した際に、どのようにふるまうか、また、それはどのような理由によって、そのようにふるまうのか」について実証的検討を行うこと、次に、2年目では、教師を対象とした質的データを収集して、「いじめに対して、教師の介入がうまくいったと考えられる場合、それはどのような介入であり、どのような結果が得られたのか」という点について検討することを予定していた。研究2年目となる2019年度までに、これらの研究計画におけるデータ収集についての予定は概ね遂行された。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の予定では、研究期間の最終年度となる2020年度に、先の2年間で収集した量的データ、質的データ双方から得られた分析結果を統合して、いじめ場面で見て見ぬふりをする傍観者を減らすことにつながる「うまくゆく実践」の構成要素をガイドラインにまとめ、それを教師対象研修会で配布し、現場の教師から新たなコメントをもらうことによって、「うまくゆく実践」の構成要素をさらに精査したうえで、小中学校教師が簡易に実施できる『いじめ傍観者低減パッケージ(文脈評価ツールとその査定結果に基づいて選択的に実施できる介入プログラムからなる)』を作成し、配布することとしていた。 しかしながら、COVID-19の影響により、教師対象研修会などを実施できるかどうか、先行きが不透明な部分があるため、まずは、量的データと質的データからそれぞれ得られた結果の統合に注力し、研究テーマの解明について更なる検討を進めることを当面の課題としている。
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Causes of Carryover |
2019年度について、当初、個別での面接による聞き取り調査を予定しており、そのための謝金や出張旅費、半構造化面接実施に際してのアシスタント雇用費などを予算化していた。しかしながら、研究担当者の骨折により、計画通りに調査を実施することが難しくなったため、急遽、研究分担者の協力を得て、集団での自由記述による質的データ収集へと調査方法を変更した。それにより、実際の調査費用が予定していた調査費用より大幅に低かったことが、次年度使用額が生じた主な理由である。 こうしたことから、当初予定していなかったが、2020年度に質的データをさらに別の方法で収集することも視野に入れて、現在、量的データと質的データの統合について検討中である。
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Research Products
(7 results)