2021 Fiscal Year Research-status Report
高次脳機能障害者の認知機能障害と社会的行動障害の包括的アセスメント技法の開発
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18K03097
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Research Institution | Kansai University of Welfare Sciences |
Principal Investigator |
山下 光 関西福祉科学大学, 教育学部, 教授 (10304073)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 臨床心理学 / 神経心理学 / 高次脳機能障害 / 空間性注意 / 半側空間無視 / 認知予備能 / 利き手 / 社会的行動障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度に関しても新型コロナ感染症の蔓延による実験・調査の中断(手続きに接近・接触を伴うため)、学会等の予定変更の影響が大きく、研究活動は低調であった。それでもようやく年度後半より、小規模ながら大学生を対象としたデータの取集を再開した。また、これまでに収集したデータの検討と論文化を進めており、1つの論文が完成し公刊された。以下その研究を紹介する。一般に健常成人には左側への空間性注意のバイアスがあることが、線分二等分課題を用いた研究によって示されている。さらに一部の研究では、この左方へのバイアスが加齢によって減少する傾向が報告されており、その背景に加齢による脳機能の低下への代償作用としての半球優位性の減少(HAROLD: hemispheric asymmetry reduction in older adults) が生じている可能性が指摘されている(Cabeza et al.,2002)。しかし、線分二等分課題は刺激の諸性質によって反応の安定性が低く、また数量化が難しいため研究者間の結果の比較も困難である。そこで反応の安定性が高く数量化も容易な空間性注意のバイアスの測定法であるgray scales taskで加齢の効果を検討した。また垂直方向については上方へのバイアスが存在することが知られているが、これについての加齢の影響はほとんど検討されていない。そこで、それに関しても併せて検討した。18歳から85歳までの168名の健常者を若年、中年、高齢者の3群に分けて、冊子版によるgray scales taskを実施した。その結果、今回のサンプルでは水平刺激では左側へのバイアスの加齢による減少は認められなかった。また、垂直刺激における上方へのバイアスにも加齢変化は認められなかった。この結果は、神経科学の国際ジャーナルであるApplied Neuropsychology: Adult誌に掲載された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2021年度に関しても新型コロナ肺炎の感染症の蔓延による実験・調査の中断(手続きに接近・接触を伴うため)、学会等の予定変更の影響が大きく、研究活動は低調であった。また、研究代表者の研究機関の異動による人的、設備的資源の変更の影響も大きい。
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Strategy for Future Research Activity |
現在のデータ収集を年度内に完了させる。また、既に得られている様々なデータの再検討からも、新たな知見を得ることが期待される。今後もデータの解析、論文化を進め投稿、公刊を目指す。最終的にはさらに3本の論文が公刊できる可能性がある。
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Causes of Carryover |
参加した学会がリモート開催であったため、旅費は不要であった。主な支出は英文の校閲費であった。残額も論文作成(校閲料、投稿料、掲載料)に使用する予定である。
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