2018 Fiscal Year Research-status Report
更生保護施設に対する地域住民の態度に関与する要因の検討-再犯防止の視点から
Project/Area Number |
18K03111
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Research Institution | Surugadai University |
Principal Investigator |
小俣 謙二 駿河台大学, 心理学部, 教授 (60185668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川邉 譲 駿河台大学, 心理学部, 教授 (90544940)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 更生保護 / NIMBY / 再犯防止 / 地域住民意識 |
Outline of Annual Research Achievements |
わが国の犯罪動向を見ると、刑法犯検挙者数は漸減しているが、再犯者率は一貫して上昇している。したがって、再犯の防止は更生保護・矯正研究において重要な問題となっている。こうした再犯の現状の背景には出所後の就労状況が不安定であることはしばしば指摘されている。そのため、国は、民間とともに、仮釈放者や保護観察処分少年などの就労確保と安定した生活場所の確保を目的として、自立更生促進センターあるいは更生保護施設への支援などを行っている(法務省ホームページ, 2019)。とはいえ施設数は十分ではなく、自立更生促進センターや更生保護施設などのあらたな開設が求められている(法務省ホームページ, 2019)。にもかかわらず、こうした施設の開設が地域住民によって理解、支持されることは極めて難しい (日本経済新聞, 2012など)。したがって、更生保護施設などの建設に対する地域住民の理解を促す要因を明らかにする研究は、再犯防止、犯罪抑止にとり重要な意味を持つ。 司法分野でのこの種の研究は、アメリカでは行われているが、我が国では少ない(渡部と小俣, 2012、横田, 2012)。このような問題意識から、筆者らは更生保護施設に対する地域住民の拒否的態度に係わる要因に関する研究を行った。 調査は、調査会社に登録された回答者、1000名(男女各500名、20歳以上70歳未満)を対象に行われた。その結果、更生保護施設に対する拒否的態度の背景には、一般的な犯罪不安と入所者に対する再犯への不安があり、それはとくに女性において強いことが認められた。また、男性では、行政等の建設主体に対する不信感が確認された。 このように、現段階での知見は、地域住民の更生保護施設受け入れを促すには、入所者の再犯に対する十分な対応と、住民の不信感を解消することが重要であることが示され、問題解決のための一定の方向性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度の当初の予定は、更生保護施設建設に対する住民の拒否的態度に影響を及ぼす要因の解明と受け入れのための条件を明らかにすることであった。その目的から、1000名を対象にした調査を実施し、一定の成果を得た。研究内容、成果については2019年度の日本心理学会と日本犯罪心理学会の大会で発表する予定である。また、現在、論文化するための準備をおこなっている。 こうした状況から、当初の予定通り進んでいると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
すでに述べたように、前年度の研究成果の発表を予定している。それと同時に、更生保護施設を対象とした、地域住民の理解を得るために、個々の更生保護施設が実施している対策についての調査をおこなう予定である。また、そのための準備として、複数の更生保護施設関係者に対するインタビュー調査の実施の可能性を検討する予定である。 一方、前年度の予算で、調査費用が当初の予定よりもはるかに少ない額で実施できた。その結果、予算にかなりの余裕ができた。そこで、前年度調査結果をさらに分析し、未解決の課題を見出し、それを明らかにする調査を実施することを新たに考えている。現時点で考えられる調査課題は、更生保護施設建設に対する住民の態度を規定する要因間の関係に関するパスモデルを設定し、それを検討することである。
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Causes of Carryover |
地域住民を対象とした調査を調査会社に委託し、実施した。その際、調査対象者数が1,000名と大きく設定したために、当初予算として1,100,000円を設定した。しかし、複数業者から合い見積もりをとり、最も低額の業者に決定したところ、300,000円程度で済んでしまった。その差額が「次年度使用額」に反映している。したがって、2019年度に追加の調査が可能となったため、それを実施することで、より精度の高い研究成果が期待できると同時に、予算の消化も可能となる。今回の件についてはこのように考えている。
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