2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03112
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
吉川 眞理 学習院大学, 文学部, 教授 (50242615)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 実践知 / テクニカルスキル / ヒューマンスキル / 概念化スキル / 転移/逆転移 / スーパービジョン |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度では「心理専門職実践知志向性尺度」作成の前段階として、まず実践知獲得過程の研究をレビューしながら、英語圏および独語圏における心理専門職養成機関のカリキュラムや経験について、指導者や修了者より情報収集を行った。 この情報収集により、まず第一に実習において生じる転移、逆転移体験をクライエントに還元できるように取り扱うために、スーパービジョンが不可欠であることが再確認された。初心者であればこそ転移や逆転移に直面する現実がある。そこで初心者が自身の内的体験に向き合いクライエントとの間に生じている相互作用を理解し支援に役立てるために、インテンシブなスーパービジョンによるバックアップが重要な役割を果たすことの認識が重要となる。この知見を「心理専門職実践知志向性尺度」作成に反映させる予定である。 第二に、日本及び異文化の心理専門職の養成において大学院の修士課程が果たし得る役割について情報収集を行った。大学院課程では修士論文さらに博士論文の執筆が修了要件や目的となっており。実習における体験を基盤にして独自の問題意識をたちあげ考察を積み上げていくことが奨励される。これは実践知を支える要素の中で概念化スキルの獲得過程として位置付けられる。このような論文の執筆は、とりわけ実践において獲得された知を学問に体系化していく心理専門職にとって不可欠な概念化スキル形成への第一歩となる。当初の計画では、この概念化スキルについては、調査の対象としないと考えていたが、本年度の情報収集、予備調査として、多様な大学院のカリキュラムを精査する中で、心理専門職の養成過程において論文執筆が重要な役割を担っていることが再認識された。そこで、今後の「心理専門職実践知志向性尺度」および「心理専門職実践知を支えるスキル学び尺度」の作成において、概念化スキルの獲得過程に関しても調査の範囲に含めることとした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
実践知研究についてレビューし、心理専門職の養成過程に対応させながら考察を深めていくうちに、概念化スキルの重要性が浮かび上がってきた。そのため、当初は調査の対象としていなかった概念形成スキルについても、心理専門職養成カリキュラムに対応させながら、その養成過程について質問項目に加えることを検討することになり、当初の予定よりも質問票の完成に遅れが生じることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当該年度の情報収集、予備調査、文献研究、考察を踏まえ、実践知を支えるスキル獲得過程に関する調査のために、テクニカルスキル、ヒューマンスキル、メタ認知スキル、概念化スキルの4つのスキルについて、具体的な項目を設定して、「心理専門職実践知志向性尺度」を作成し、日本及び異文化圏の指導者を対象に調査を行う。さらに、指導者の所属する機関において、カリキュラムのどの部分で、どのような形式でその修得が行われているかを問う「心理専門職実践知を支えるスキル学び尺度」を作成し、指導者対象の調査を行う。 日本の心理専門職養成カリキュラムである臨床心理士養成カリキュラムと、公認心理師カリキュラムを比較するとともに、異文化圏のカリキュラムとの対照を行う予定である。 なお、6月においてはロンドンのタビストッククリニックのカリキュラムに関する情報収集、8月はアメリカ心理学会における情報収集を予定している。
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Causes of Carryover |
当該年度は海外での情報収集を2回計画していたが、1回に減らして、そのかわりに海外の心理専門職指導者を招聘したため、当初の予算よりも旅費が減額となった。こちらの旅費は、次年度のロンドン出張、およびアメリカ心理学会参加の旅費に充てる予定である。
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