2021 Fiscal Year Research-status Report
外傷性脳損傷者の前頭葉機能障害のテレリハビリテーション:行動・脳波指標による検討
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18K03117
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Research Institution | Meisei University |
Principal Investigator |
柴崎 光世 明星大学, 心理学部, 教授 (00325135)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 外傷性脳損傷 / 前頭葉機能障害 / テレリハビリテーション / 認知リハビリテーション / 脳波 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,慢性期の外傷性脳損傷(TBI)者を対象に,インターネットを利用したデリバリー型リハビリテーション(テレリハ)による在宅ベースの前頭葉機能リハビリテーションを実施し,その有効性について行動及び脳波データの両側面から検討することを目的とした.2021年度は,前年度に引き続き,前頭葉機能(ワーキングメモリと遂行機能)の促進をねらいとした在宅でのテレリハプログラムの開発(研究1)を進めると同時に,テレリハ介入の効果を脳波指標によって評価する脳波課題の開発と基礎データの収集をおこなう研究3を実施した. 研究3では,視空間的・言語的N-back課題(ワーキングメモリ),反応抑制課題(遂行機能),表情認知課題(遂行機能)の3つの脳波課題を開発し,2021年度は,前年度までに収集した大学生を対象とした基礎データの詳細な分析をおこなった.N-back課題と反応抑制課題に関して,課題遂行中の事象関連電位成分のふるまいと,各課題で要求される認知機能を測定する神経心理学的検査の結果との関連性について検討したところ,N-back課題ではWAIS-IV知能検査のワーキングメモリ指標,反応抑制課題では遂行機能障害質問表(DEX)の各因子得点とP300事象関連電位成分との間に有意な相関があることがわかった.特に,反応抑制課題では,呈示された刺激に対するボタン押し反応の抑制が求められるNo-go条件下での前頭葉のP300潜時と,DEXの社会的機能得点及び行動・情動の自己制御得点との間に.7程度の強い相関が認められた. 一方,2021年度の後半からは,TBI者を対象としたテレリハ介入の実施に先立ち,対象者の日々の在宅訓練への取り組みについて調査するベースライン測定と,研究3で開発した脳波課題と各種神経心理学検査を用いた事前評価をおこなっている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究課題は2018年度から4年間を研究期間として計画され,2021年度中に本研究課題に含まれるすべての研究を終える予定であった.しかし,2020年度からの新型コロナウィルスの感染拡大により,本研究のフィールドである通所リハ施設の休所が長らく続き,TBI者を対象とした脳波実験及びテレリハによる介入研究の着手が2021年度の後半まで大きくずれ込んでしまった.このような状況から,本研究は予定よりも遅れていると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は,前述のように新型コロナウィルスの感染拡大による影響のため,TBI者を対象とした脳波実験及び臨床研究の着手が大きく遅れたので,研究期間を当初予定から1年延長し.2018年度から2022年度の5年間と設定することとした. 本研究が対象とするTBI者のほとんどが基礎疾患を有していることから,対象者の安全確保を最優先におきつつ研究を進めていく.そして,今後の感染拡大状況や研究の進捗に応じて,本研究で予定していた2つのテレリハ研究(研究4,研究5)を1つの研究としてまとめたり,介入群と統制群の人数をしぼったりするなど,研究計画を適宜修正することを検討する.また,研究の推進をはかるために研究補助員やリサーチアシスタントを拡大することも検討する.
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Causes of Carryover |
<次年度使用額が生じた理由> 先述のように2021年度に予定していたTBI者を対象とした脳波実験及び介入研究の着手が大きく遅れたため,これらの研究にかかる経費(脳波測定用消耗品代,対象者への謝金,インターネット通信費,データ解析補助のための人件費など)の執行を予定通りに進めることができなかった.また,研究成果発表をおこなった国際学会及び国内学会がいずれもオンライン開催となったので,これにかかる経費が減少したことも影響している. <使用計画> TBI者を対象とした実験や介入研究は2021年度の後半に着手したところであり,2022年度は次年度使用額を利用しながらこれらを進めていく.また,研究推進のための研究補助員やリサーチアシスタントの雇用にかかる人件費にも次年度使用額を充てる.
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Research Products
(2 results)