2018 Fiscal Year Research-status Report
セルフ・コントロールの二元性に注目した長期行動計画の有効性
Project/Area Number |
18K03122
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
杉若 弘子 同志社大学, 心理学部, 教授 (90257171)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | セルフ・コントロール / 行動の抑制と開始 / セルフ・コントロールの二元性 |
Outline of Annual Research Achievements |
広くは、「自分の行動を自分で操作、統制すること」と定義づけられるセルフ・コントロールは、われわれが適応的な生活を営む上で欠かすことのできない行動のプロセスである。これまで、「(望ましくない、あるいは不適切な)行動の抑制」に焦点を当てて展開されてきたセルフ・コントロール研究には、近年、新たな視点が取り入れられつつある。その代表ともいえるのが、セルフ・コントロールの「二元性」、すなわち、従来型の研究の中心にあった「行動の抑制(stop control あるいは inhibitory self-control)」に加え、これとは異なる行動形態をもつ「行動の開始(start control あるいは initiatory self-control)」にも注目する視点である。本研究では、「二元性」の基盤をなすセルフ・コントロールの分類の妥当性を再検証するとともに、2つのセルフ・コントロールの特徴を踏まえた長期行動計画の有効性を検討することを目的にしている。2018年度は、これまで理論先行で提唱されてきた「セルフ・コントロールの二元性」を実証的に示すことができるかを確認するために、以下の作業を実施した。従来のセルフ・コントロール研究において開発され、使用されてきた尺度と関連文献から、セルフ・コントロールの実行場面を記した項目を収集し、重複項目の整理と検討を経た後に、3名の臨床心理学の専門家に、各項目が「行動の抑制」と「行動の開始」のいずれに該当するものかの分類を依頼した。分類の一致度に基づき、さらなるデータ収集に向けた項目リストを作成した。引き続き、項目リストをもとに、①セルフ・コントロールを「行動の抑制」と「行動の開始」の2つに分けて評価できる尺度を作成し、②2つのタイプのセルフ・コントロールが機能する条件の差異を検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
セルフ・コントロール尺度の検索と収集、関連文献におけるセルフ・コントロールの二元性に関わる記述の確認を入念に行った結果、想定よりも時間を要した。このため、当初予定していた調査データの収集には至らなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究活動により作成された項目リストをもとに、①セルフ・コントロールを「行動の抑制」と「行動の開始」の2つに分けて評価できる尺度を開発し、②2つのタイプのセルフ・コントロールが機能する条件の差異を検討する予定である。 具体的には、一般成人と大学生の計500名程度を対象に、先に選定された項目リスト内容がどの程度自分にあてはまるかをリッカート法で評定させる。また、これと同時に、「行動の抑制」との強い関連が予想される指標(例えば、喫煙本数やアルコール摂取量)、及び「行動の開始」との強い関連が予想される指標(例えば、運動時間や勉強時間)に関する情報を収集する。セルフ・コントロールを二元的に評価できる尺度の因子構造を確認するとともに、上記関連指標との関係性を分析することにより、尺度の妥当性と2つのセルフ・コントロールの機能の差違を明らかにする。
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Causes of Carryover |
計画していた海外出張が先方との日程調整がつかずに実施できず、メイルでの情報交換によって代行した影響が大きい。2019年度には、国内外の学会において研究成果の発表を行うとともに、データの管理と分析に用いるパソコンなど備品類の購入を予定している。積極的かつ適切な執行に努める。
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Research Products
(2 results)