2018 Fiscal Year Research-status Report
がんの終末期の治療選択における意思決定のスタンスに応じた意思決定支援方法の開発
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18K03124
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
塩崎 麻里子 近畿大学, 総合社会学部, 准教授 (40557948)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 後悔 / 意思決定 / 感情調整 / 文化差 / がん患者 / 遺族 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の成果は以下の2点に要約される。 がんの終末期の治療選択に関する高齢遺族(37名)の面接調査データを再解析した結果,後悔を制御するための方略は,意思決定当時21カテゴリー,死別から現在に至るまで24カテゴリーに分類された。これまでの後悔制御方略に関する先行研究ではみられなかった特有のカテゴリーとして,「妥協点を探る」「医療者との信頼関係を築く」「第三者の経験を生かす」「大局的見地からの諦観」といった方略が得られた。これらのカテゴリーは,相互協調的な我が国の文化的背景を反映したものであり,高齢期の感情の調整において,文化社会的背景を念頭に意思決定のゴール設定を考えていく必要があることが示唆された結果といえる。また,カイ二乗検定の結果,後悔がないと回答した遺族は,後悔があると回答した遺族に比べて,意思決定後に感情焦点型の制御方略を多く用いていることが示され(χ2(1)=5.46, p<0.05),変えられない現実に対して,いかに「受容」していくかが重要であることが示された。 次に,文化社会的背景に影響を受ける意思決定のゴール設定を説明するうえで,Carstensenが提唱した社会情動的選択性理論(Socioemtional Selectivity Theory)とGrossらが提唱した感情調整プロセスモデル(Process model of emotion regulation)に着目し,先行研究を概観した。後悔を感情のひとつととらえることで,加齢の影響を受ける意思決定における感情の役割についての広い知見を応用できる。特に,文化社会的背景によって培われていく「価値」をこれらのモデルに組み入れることで,文化差を検討できる尺度開発を行う予定である。そのため,意思決定のゴール設定や感情調整方略に関連すると考えられる既存の尺度項目を収集し,新たな尺度開発に向けての項目精査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予定通り,再解析を終え,一定の結果を示すことができた。また,新しい尺度開発に向けての仮説の構築や,項目収集は予定通り進められている。しかしながら,先行研究を概観した結果,当初想定していなかった理論やモデルからの学びが多く,仮説を修正する必要が出てきたため,予備調査の実施は予定よりも遅れているため,全体としては「やや遅れている」といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
研究を進めていくうえで,研究の仮説モデルはとても重要なものであるため,研究の実施の予定が少し遅れたとしても,精査したうえで,進めていくことが望ましいと考えている。関連領域の専門家とのディスカッションの期間を予定に加えて,進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
本年度は、本務校である大学の在外研究の機会を得たため、アメリカにおいて今後の国際共同研究の下準備を行うことに専念する時間が得られた。海外の様々な研究者とのディスカッションを反映させる形で仮説を練り直すのに時間を要し,予定していた調査研究を来年度に繰り越すことにしたため,本年度の使用額は予定より少額となった。
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