2019 Fiscal Year Research-status Report
Study of prescriptive factors of over-adaptation on work stress
Project/Area Number |
18K03139
|
Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩永 誠 広島大学, 総合科学研究科, 教授 (40203393)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福森 絢子 宇部フロンティア大学, 人間健康学部, 講師 (30461354)
大山 真貴子 共立女子大学, 看護学部, 准教授 (10369431)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 過剰適応 / 労働ストレス / タイプA行動 / 防衛的悲観主義 / 対処行動 / ストレス反応 / 仕事負荷 |
Outline of Annual Research Achievements |
過剰適応とは,社会・文化的環境に対する適応が過度に行われ,その結果として自己の内的安定性という内的適応との不均衡が生じた状態を指す。筆者が行ってきた研究から,従来の過剰適応傾向尺度は特性というよりは状態としての過剰適応を反映していると考えられるため,令和元年度は以下の2研究を実施し,状態としての過剰適応を測定する尺度の開発を行った。 研究1 過剰適応状態への影響過程に関する探索的研究:過剰適応傾向尺度を元に,状態としての過剰適応を表している表現に改めた項目を用いて,①過剰適応状態とストレス反応との関連,②過剰適応傾向やストレス関連特性との関連性の検討を行った。その結果,①過剰適応状態がストレス反応を高め,バーンアウトと結びつくことが明らかになった。②過剰労働が過剰適応状態を直接高めるとともに,過剰適応傾向や拒否回避欲求,承認欲求を媒介して高めることがわかった。ストレス反応に対しては,過剰労働が直接促進させるとともに,タイプA行動や過剰適応傾向を媒介して促進させることがわかった。 研究2 過剰適応状態尺度開発の試み:研究1における過剰適応状態を測定する項目は,過剰適応傾向尺度を元に探索的に作成したもので,下位因子や影響要因を十分に考慮したものではなかった。そこで,過剰労働に陥りやすい内的・外的要因を考慮した尺度を開発することとした。因子分析(最尤法プロマックス回転)の結果,他者からの拒否回避,自己犠牲的労働,ワーカホリック,完璧主義の4因子が抽出された。Cronbachのα係数は0.750以上と,十分な内的一貫性を示した。過剰適応傾向尺度の下位因子との相関係数は0.069~0.547と,中程度以下の関連を示し,尺度の併存的妥当性が確認できた。またストレス反応との相関係数も0.180~0.445と中程度以下であり,ストレス反応とは異なる側面を反映していることがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は,過剰適応を状態として測定するという観点から2つの研究を実施した。現在使用されている過剰適応尺度は,過剰適応傾向を測定する特性として位置付けられている尺度である。しかし平成30年度に実施した研究によると,仕事ストレッサーや職業的コミットメント,防衛的悲観主義,タイプA行動との関係から,過剰適応の下位因子によっては個人特性として位置付けるよりは,ストレス反応や職務満足といったアウトプットとして位置付ける方が共分散構造モデルの適合度が高いことが明らかになった。そこで令和元年度は,研究1として,過剰適応傾向尺度を元に,過剰適応状態を表すよう項目を修正し,特性としての過剰適応傾向と状態としての過剰適応の関連,および過剰労働や他のストレス関連刺激との関連性に関する探索的検討を行った。その結果,状態としての過剰適応を測定することで,ストレス関連個人特性との関連性やストレス反応やバーンアウトとの関連性の点で,合理的な説明のできる可能性を示唆する結果を得た。そこで研究2として,他者回避や承認欲求という外的要因や完全主義といった内的要因から過剰適応に陥る可能性を探るために,これらに関連すると考えられる項目を作成して,過剰適応状態尺度の開発を行い,過剰適応傾向やストレス反応との関連の検討を行った。過剰適応状態は4因子から構成され,過剰適応傾向やストレス反応と関連することを明らかにしている。これらの因子の内容から,過剰適応状態は,特性としての過剰適応傾向だけに規定されていない可能性を示すものであり,それについて令和2年度は検討を深めていきたい。これまで過剰適応傾向という特性的な側面から尺度開発がなされてきたが,過剰適応状態を測定することで,ワークストレス研究に新たな知見を提供することができるものと期待できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和元年度で過剰適応状態尺度の開発を行ったため,過剰適応がストレス反応に及ぼす影響および,他のストレス関連特性との関係についての検討が十分行えているわけではない。しかし,過剰適応を状態として捉えることは,過剰適応の定義にも即しており,またワークストレス研究の上でも,過剰適応がストレス反応を高め,バーンアウトに結びつくという関連性を明らかにすることができる可能性がある。そのため,状態としての過剰適応を測定し,ワークストレス研究の枠組みから検討することが重要である。令和2年度は,これらの観点を踏まえて,以下の研究を行い,最終的なまとめに結びつけたいと考えている。 過剰適応傾向が職場での過剰適応を引き起こすことにより,ワークストレスやその後のバーンアウトとどのような関連を示すかの検討を行う。その際,タイプA行動や防衛的悲観主義といったストレス関連個人特性との関連性を検討するとともに,これらの影響を統制した検討を行うことで,過剰適応傾向のもたらす問題について明らかにする。さらに,過剰適応傾向に関連する承認欲求や他者からの拒否回避欲求といった対人関係的問題に加え,完全主義や強迫傾向といった個人の内的側面が過剰適応状態とどのような関連性を示すのか,また過剰適応状態の下位因子によってストレス反応との関連性が異なっているのかを検討することとする。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響により,予定していた研究打ち合わせのための出張が中止となったため,予算が余ることとなった。令和2年度には打ち合わせ等で使用する予定である。
|