2020 Fiscal Year Research-status Report
Study of prescriptive factors of over-adaptation on work stress
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18K03139
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
岩永 誠 広島大学, 人間社会科学研究科(総), 教授 (40203393)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
福森 絢子 富山県立大学, 人間健康学部, 講師 (30461354)
大山 真貴子 共立女子大学, 看護学部, 准教授 (10369431)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 過剰適応傾向 / 過剰適応状態 / 見捨てられ不安 / 職業的アイデンティティ / タイプA行動 / 防衛的悲観主義 / ストレス反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
過剰適応とは,社会や文化と言った外的環境に過度に適応し,その結果として自己の内的安定性が損なわれた状態を指す。これまで筆者が行ってきた検討によると,従来の過剰適応傾向尺度は特性というよりは状態としての過剰適応を反映していると考えられるため,令和2年度は開発した過剰適応状態尺度を用いて,過剰適応の生起過程に関する検討を行う予定であった。しかしコロナウィルス拡大の影響で,テレワークといった新しい労働形態への移行が急速に進んだことから,これらのストレスの影響が強く,過剰適応の検討は難しいと判断した。そのため,令和2年度に計画した調査を一旦中断し,令和3年度に計画を変更して実施することとした。令和2年度はこれまでのデータを再分析し,以下の2つの検討を行なった。 検討1 会社員を対象とした過剰適応への影響過程の再検討:使用している尺度の確認的因子分析を行い,これまでの因子分析結果が妥当性を検討した。会社員を対象としても,測定された過剰適応がストレスを規定する個人特性ではなく,ストレス関連個人特性に規定されている反応として位置付けられることを確認した。共分散構造分析により,過剰適応状態への影響過程を検討し,タイプA行動からの影響が認められないことから,ストレス反応とは異なる影響過程であることを明らかにした。 検討2 過剰適応状態尺短縮版の作成:令和元年度に作成した過剰適応状態尺度は4因子22項目からなる尺度であったが,項目数が多く,因子の項目も3~8項目と幅があったことから,各因子3項目からなる短縮版を作成した。全尺度版と短縮版の下位因子間相関は0.920と非常に高く,モデル適合度も短縮版で高いことから,短縮版の有効性は高いことを確認した。労働者の過剰適応を測定する上で,短縮版は有効であると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
令和2年度は,コロナウィルス拡大の影響により調査を実施しなかった。テレワーク等の実施により働き方や生活環境が大きく変容したことが,労働者にとって新たなストレスとなっていると考えられるため,過剰適応の検討を行うことができなかったからである。職場における他者との関わりが重要な規定因となる過剰適応を検討する上で,テレワークの影響は大きい。テレワークにより,会議等を除いて対面での仕事がなくなり,他者の目を気にすることなく自分のペースで仕事ができる環境になってきた。そのため,テレワークは,従来の仕事形態と比べて過剰適応を起こしにくいと考えられる。そのため今後は,研究計画を一部変更して調査を行うこととする。令和2年度は調査を実施していないのでデータの再分析を行い,令和3年の調査に向けての準備と論文作成を行った。一部の成果については,すでに投稿済みである。 平成30年度は看護師を対象とした検討を行い,測定された過剰適応が個人特性というよりは生起した反応と位置付ける方が妥当であるという結果を得ている。令和2年度は会社員を対象として,看護師と同様な傾向が得られるかの検討を行った。その結果,過剰適応状態が1因子構造である点で看護師データと異なるものの,ストレス関連個人特性との関係性については大きな違いが認められず,過剰適応状態を規定する要因とその影響過程は,職種を超えて比較的安定した減少であることが確認できた。 令和元年度に開発した過剰適応状態尺についても追加分析を行い,12項目からなる短縮版を作成した。短縮版は,全項目版との下位因子間相関は十分に高く,モデル適合度も高いことから,使用に耐えうる実用的な尺度であることが確認できた。令和3年度の調査では,この尺度を用いて検討を進めることになる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は,(1)過剰適応傾向が職場での過剰適応と,ワークストレスやバーンアウトとの関連に関する検討,(2)過剰適応傾向に関連する承認欲求や他者からの拒否回避欲求といった対人関係的要因及び完全主義や強迫傾向といった個人内要因,過剰適応状態との関連に関する検討,を計画していた。しかし,コロナ禍の影響でこのままの研究計画で実施することは難しいため,令和3年度は研究計画の一部を変更して実施する。 コロナウィルスの拡大によりテレワークが進んでいることから,新しい労働形態へ適応しなければならないことや家庭での労働,外出の自粛といった環境変化が強いストレスを引きおこしていると予想される。そのため,コロナ関連ストレスの項目を新たに作成して,過剰適応やワークストレスとの関連を検討する。 テレワークが進みつつある一方,一部の企業や業種では依然として対面での仕事が続いている。そのような職場環境では,これまで同様に,職場の上司や同僚との関係性がもとで過剰適応が引き起こされているものと思われる。それに対して,テレワークをしている労働者は対面での人間関係が少ないことから,対面での労働と比べて過剰適応を起こしにくいと考えられる。以上のことから,対面で仕事を続けている群とテレワークをしている群の2群を対象として,コロナ禍における労働環境変化と過剰適応,ワークストレスとの関連性についての比較検討を行う計画である。令和2年度に設定した2つの研究をベースに,コロナによるワークストレスへの影響も併せて検討する予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度は新型コロナウィルスの影響により調査を中止したため,研究費を使うことがなかった。研究を1年延長したことから,令和3年度には,調査経費及び打ち合わせ等で使用する予定である。
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Research Products
(1 results)