2020 Fiscal Year Research-status Report
死別への適応における記憶の機能: 故人との絆の変容プロセスの探究
Project/Area Number |
18K03146
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
田上 恭子 愛知県立大学, 看護学部, 准教授 (80361004)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山中 亮 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (20337207)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 故人との継続する絆 / 不随意記憶 / 死別への適応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,死別への適応において故人との絆がどのように変容していくか,故人を想起する際の主観的体験と無意図的想起のはたらきに着目し明らかにすることである。令和2(2020)年度の研究実績は以下の通りである。 1) 中高年の配偶者との死別経験と故人との絆,及び不随意記憶に関する調査について分析を行った。主な結果として,①配偶者との死別者は,故人との生前の愛着及び故人との絆が強く,現在の主観的回復度が低いこと,②故人に関する不随意記憶の想起頻度が高く,より鮮明に再体験感を伴う体験として情緒的に想起されること,③死別経験の特徴,故人との絆,故人に関する不随意記憶に性差は認められないこと,が示唆された。このことから,配偶者を喪った中高年は適応的ではない絆を形成しやすいことが考えられた。また従来いわれているような,男性が女性より配偶者との死別への適応が困難であるという見解は,本研究からは支持されなかった。そしてさらなる研究の課題が示唆された。本結果について,日本心理学会第84回大会で発表した。 2) 先に調査を行った対象喪失と故人に関する記憶の現象学的特性に関して,データの再分析を行い,①喪失からの時間が経過すると,特に視覚的側面において記憶がおぼろげになっていくこと,②精神的健康状態が良好であるほど色の含有量が減少し,よりモノクロに想起されること,③主観的回復の程度が高くなるほど内的リハーサルが低下すること,が主として明らかとなった。これらについて論文を執筆した。現在学術誌への投稿に向けて準備を進めている。 3) これまでの研究成果から,欧米で開発されている絆に関する尺度を翻訳し日本語版を作成する必要性が示唆されてきたため,その準備としてまず絆の概念を明らかにすることを目的として文献の精読を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
これまで実施した調査研究で明らかになったことを整理するため,前年度から引き続きこれまでの研究の分析とまとめを行っているところであるが,変数の多さや対象者数の多さなどから,分析とまとめに時間がかかっている。このことが主として進捗の遅れに影響していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3(2021)年度は,第一に,これまでの成果について論文を投稿する。 第二に,これまでの検討から最も優先的に行うべき課題として,尺度の翻訳・日本語版の作成が考えられることから,まず概念の整理を行い尺度作成研究に向けての準備を行う。 第三に,絆の変容を質的に明らかにするための面接調査を計画しているが,その具体的な実施準備を行う。
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Causes of Carryover |
発表を予定していた国際学会が開催延期となったため,それに係る学会参加費及び旅費の使用がなかった。また,令和2(2020)年度は,データ分析と成果発表,論文執筆を中心に取り組んだため,調査実施に係る物品費等を要さなかった。以上から,次年度使用額が生じた。 令和3(2021)年度は,文献精読のための文献等の購入・複写費,調査実施に係る費用,面接調査協力者への謝金,研究実施において必要な物品費等を計画している。
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Research Products
(2 results)