2018 Fiscal Year Research-status Report
社会的養護の環境にある子どもに対する心理的発達支援モデルの新展開
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18K03147
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
坪井 裕子 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (40421268)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鋤柄 増根 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (80148155)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 児童福祉施設 / 切れ目のない発達支援 / 心理教育 / 学習支援 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,社会的養護の環境にある子どもたちの心理的な危機状態からの回復と,健全な発達支援に焦点をあて,施設における対応や支援の工夫を検討するものである。最終的には児童福祉施設における包括的な支援モデルの構築を目的としている。平成30年度に行った研究の成果は以下の通りである。 1.児童福祉施設入所児への切れ目のない「発達支援」アプローチの開発(1)心理教育プログラムの開発・実施:複数の児童養護施設の協力を得て,子どもへの心理教育プログラムを実施し、効果測定のため事前・事後の質問紙調査を行った。新たに幼児向けの心理教育プログラム開発を行い、実施した。また、児童養護施設における子どもの性的問題に対する施設のケアの体制と職員の意識との関連について、論文にまとめている。 (2)切れ目のない包括的親子支援に関する研究:妊娠前から子育て期間における切れ目のない支援について、情報収集のために海外調査を行った。フィンランドのネウボラの取り組みについての視察と関係者のインタビューを行った。 2.社会的養護の環境下における子どもへの「心理的学習支援」の導入の実践研究 (1)全国の児童養護施設を対象に,施設における学習や進路指導に関する体制および実態に関する質問紙調査を前回の科研費で行い、その結果を論文にまとめたものが平成30年度、学会誌に採択された。(2)児童養護施設に入所している児童に対して,個別の心理教育アセスメントから学習支援プログラムを実施した例について平成29年度に学会発表を行ったものを、平成30年に論文としてまとめて学会誌に投稿した。(3)児童養護施設に入所している児童に対して,学校生活スキルに関する質問紙調査および,学校における対人葛藤場面における葛藤解決方略に関する半構造化面接を、継続的に行っている。平成30年度も追加データの収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していた心理教育プログラムの作成・継続的な実施及びデータ収集と分析は,ほぼ予定通りに行うことができている。学習支援に関する調査では,論文化が進んだ。 施設入所児に対する学校生活スキルに関する質問紙調査および,学校における対人葛藤解決方略に関する半構造化面接は現在も随時実施しており,データの蓄積を継続的に行っている。以上のことから,概ね順調に進展しているといえるが,事例の蓄積には数年単位での時間がかかると考えている。ある程度のデータ数が集まったところで分析に取り掛かる予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.心理教育的アプローチに関する研究 (1)プログラムについて:H31年度も継続的してプログラムを実施し,新たな効果測定データを収集する。小中学生のプログラムについては、5年間の効果測定データの縦断的な分析を行う予定である。さらに、幼児向けプログラムの実施について学会発表を行う。(2)調査研究について:施設のケアの体制と子どもの問題との関連についての研究成果および,心理教育プログラムに関わる職員の意識に関する研究成果について論文化したものを投稿する。 2.施設入所児の支援に関する研究 (1)児童養護施設入所児の学習支援プログラムについて:H30年度に実施したものをまとめ、学会発表を行う予定である。(2)児童養護施設児の学校生活スキル:データをまとめ論文化する予定である。学校における対人葛藤場面における葛藤解決方略に関する半構造化面接のデータについては一定数が集まった段階で結果を分析し,成果発表を行う予定である。 3.親子の包括支援に関する研究:海外視察及びインタビューから得られた知見をまとめ、成果発表する予定である。
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Causes of Carryover |
心理検査用具を購入予定であったが、そのうちの一部は、児童養護施設の備品である検査用具を使用させていただけることになったため、物品費が抑えられた。また、データ入力や分析も自分たちで行ったため、人件費や謝金の支出が少なかった。そのため、予定より金額に余裕が出ている。これらの金額は平成31年度の学会発表を行うための旅費として用いる予定である。
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