2019 Fiscal Year Research-status Report
発達障害児者における強みの探索的研究と精神的健康・社会適応との関連の検証
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18K03158
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Research Institution | Aichi Toho University |
Principal Investigator |
高柳 伸哉 愛知東邦大学, 人間健康学部, 准教授 (20611429)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 青年期 / 発達障害 / メンタルヘルス |
Outline of Annual Research Achievements |
2019年度には、研究協力者らとの協働による小中学生対象のアンケート調査を実施した。また、これまで実施した調査データから、発達特性とメンタルヘルス、問題行動の関連についての検証を行った。中学生本人に自傷行為の経験有無、抑うつ、攻撃性、友人関係問題、社会的不適応(ストレス)、情動調整方略、ソーシャルサポートを尋ね、保護者には発達障害特性としてASD傾向とADHD傾向を尋ね、中学1年時から3年時まで年に1回の調査を行う縦断的調査を実施し、述べ4,050名の中学生(男子2,051名、女子1999名)から有効回答を得た。分析では中1・2年時に自傷行為を経験したと回答した者は分析から除き、中学3年時に初めて自傷行為を行った「自傷経験群」と3年間自傷行為を経験しなかった「対照群」で各尺度得点を比較し、中学3年時における自傷行為の初発に関連する要因を検証した。その結果、中学3年時における自傷行為の初発に関連する要因として、中学1年時からみられる特性リスクではADHD特性や家庭・学業ストレス、友人関係問題などが有意な関連を示した一方、中学3年時における状態リスクでは特に友人関係問題や家庭などでより大きな関連がみられた。 発達障害当事者への調査については、東海地方の自治体や当事者団体との連携から、本人や保護者への面談等を実施したものの、具体的なアンケートやインタビュー調査を実施するまでには至らなかった。自治体・当事者団体との連携は継続しているため、今後の研究成果につなげる取組が必要となる。また、2020年度には新たに関東地方の自治体との連携により、同様に発達障害に関連した子どもや保護者に関する調査を実施予定であり、対象地域を広げより一般的な結果を得られる成果が期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
上記の通り、大規模調査については実施しているものの、本研究の中心的要因である「特徴的強み」を導入した調査はまだ実施できていない。また、探索的研究ともなる発達障害当事者(主に成人)とその保護者を対象とした取組では、自治体や当事者団体との連携体制は構築されており、調査対象者らとの連絡もとれているものの、具体的な質的・量的データを取得する調査を実施するまでにはいたっていない。2020年度にはあらたに関東地方の自治体との連携が実現する運びとなったが、大規模な調査ではなく、発達障害に関わる職員や乳幼児期の保護者を対象とした小規模な調査を実施する計画である。これらのことから、複数地域や幼少期から成人までの広い年代を対象とした調査を実施しうる環境づくりができてきた一方で、具体的な調査実施に至っていない点から、進捗状況は「やや遅れている」という自己評価となった。2020年度には、これらの環境を活用した質的・量的研究の取組みを進めていく。
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Strategy for Future Research Activity |
上記のように、本研究の取組はやや遅れている状況であるものの、発達障害当事者とその保護者らへの調査時期について、東海地方と関東地方で近似させることにより、時期が異なる問題に対応しうるメリットも出てくる。進捗状況によっては研究期間延長の可能性も考慮しつつ、得られた協力を研究知見と社会貢献につなげるため、調査項目やインタビュー調査の実施を進めていくこととする。なお、コロナ問題により遠隔地への移動やインタビュー調査の実施についてオンライン等の代替方法の検討も必要な見込みであるため、研究対象者や協力者らとの相談の上で現実的な対応策を策定していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額は、大規模調査においてあらたな調査項目を導入できなかったこと、当事者・保護者調査で具体的な量的・質的データを得るに至らなかったことなどから、支出予定の調査費用や謝金が使用されなかったことによる。また、作業に適したソフトウェアを導入したことで、研究補助要員を雇うことなく個人情報保護を申請者のみで扱う体制を両立できたことにより、雇用人件費を削減できたことも影響した。 なお、翌年度では延期した調査の実施や自治体・調査協力者らとの連携におけるオンライン化への対応、関東の自治体への旅費などの支出が見込まれる。また、研究の進捗状況により、翌々年度への研究期間延長の可能性も視野に入れ、効果的な研究費使用を行う。
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