2022 Fiscal Year Research-status Report
心的外傷後成長は長期の心理的適応と健康行動を維持するか-がんと糖尿病の比較から
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18K03160
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Research Institution | Kyoto Notre Dame University |
Principal Investigator |
河瀬 雅紀 京都ノートルダム女子大学, 現代人間学部, 名誉教授 (70224780)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心的外傷後成長 / がん / 糖尿病 / 健康行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、がん患者と糖尿病患者の心的外傷後成長(PTG)に焦点をあて、自己像や世界観についての認知の変化と行動変容との関係を明らかにし、健康行動の促進を目指すものである。 このうち、がんに関しては、長期生存しているがん患者のPTGと精神的苦痛の緩和や心理的適応、健康行動との関係を明らかにするために、PTGI-J、ピアサポート尺度、心理的適応尺度、精神的健康調査票、仕事意欲測定尺度、健康行動に関する項目からなる質問紙調査を初年度に計画し実施した。その結果、PTGのPersonal Strengthが仕事の充実感に、ピアサポートの情緒的サポートは就労意欲に正の影響を与えた。また、PTG、ピアサポートとも、健康行動の食事・栄養への配慮、健康診断、定期的通院、情報・知識の入手と正の関連があった。そこで調査対象者を増やした研究計画を立てたが、新型コロナの影響のためその内容・方法を一部変更した。すなわち、健康行動と精神的健康を従属変数とし、PTGおよびソーシャルサポートとの関連をみるための調査とし、さらに、がんの部位を限定し、乳がん治療施設の協力を得て、乳がん患者を対象に研究計画を作成し、所属大学の研究倫理審査委員会の承認(2022年6月)を経て、2022年11月に調査実施施設の倫理委員会に申請した。その後、実施の承認を得、また、新型コロナウイルス感染症に対して「マスク着用の考え方の見直し」が出されたことから、2023年3月より調査を開始した。現時点では、回答者の年齢では50歳代が最も多く、40歳代、60歳代と続いている。また、罹患期間では、5年以上が最も多く、1年~3年未満、3年以上~5年未満と続いている。病期ではステージⅠが最も多く約半数を占めている。今後詳細にデータの分析を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
がん患者を対象とした調査については、量的調査と質的調査を同時に実施する計画を量的調査へと変更したが、2022年度も新型コロナ感染の広がりがあり、その広がりの程度や推移が地域によってさまざまに変化し、それに伴う行動への制限も地域や時期そして医療機関によって異なるため、従属変数である健康行動に対する個人的要因よりも、新型コロナ感染の状況による影響が大きくなり、一定の調査期間を設定した量的調査の実施が困難で、開始時期が2023年3月となったため。 一方、糖尿病患者を対象とした調査については、新型コロナ感染の影響のため、面接調査を実施する患者数をさらに増やすことが困難であった。
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Strategy for Future Research Activity |
がん患者を対象とした量的調査については、時期によって、そして、地域によって、新型コロナ感染の広がりが異なり、また、医療機関により感染状況や行動制限への対応も異なるため、それに対する影響を可能な限り排除できるように、がんの部位を限定し、さらに限定された地域・医療機関で、かつ、調査期間を短期に設定し、調査を実施する。すでに第1回目の調査は実施した。その結果を見て、2回目の調査の実施の有無を検討し、同時に、1回目の調査についてはデータ分析を進める。 なお、糖尿病患者を対象とした調査については、対面での調査により10名の分析可能なデータが得られたため、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)を用いて分析結果をまとめていく。
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Causes of Carryover |
2022年度は、特に上半期では、新型コロナ感染拡大による影響が大きかったため、調査実施が困難になりデータの入手に遅れが生じ、予定していた統計ソフト等の購入を取りやめたことから、物品費、その他の支出額が少なくなり、次年度使用が生じた。 2023年度の補助金の使用計画は、物品費(統計ソフト等)、旅費(国内学会参加および情報収集)、人件費・謝金(データ入力整理等)、その他(学会参加費、論文掲載料等)である。
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