2018 Fiscal Year Research-status Report
Application of the support program to the family in which the mother has a developmental disability
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18K03164
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Research Institution | Beppu University Junior College |
Principal Investigator |
飯田 法子 別府大学短期大学部, その他部局等, 教授 (10612145)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 母親の発達障害 / 自閉スペクトラム症 / 家族への支援 / ビデオ観察法 / 支援プログラムの応用 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自身に発達障害がある母親に対して、母親や家族を支援をするためのビデオを用いたプログラムを、子育て支援の現場において応用するものであり、平成30年度~32年度の3年間で完成させるものである。その基本となるプログラムは平成24年度~26年度にかけて研究者が作成したものである(科学研究費挑戦的萌芽研究:NO.24653207)。平成30年度は、研究対象となる家族とその子育て支援の現場となる施設として、2つの対象を選んだ。 事例1の研究対象家族については、母親と認定こども園からの協力は得られたが、父親はビデオ撮影に拒否感があるとして、実施には至らなかった。この経過を踏まえて、認定こども園に対して本プログラムを実施する場合の課題点などの意見を聴取した。 事例2の研究対象家族は、母親が自閉スペクトラム症と診断されており、子どもも自閉スペクトラム症およびADHDとの診断を受け、父親は仕事上不在が続き、実質的には母親が一人で子育てを担っていた。 事例2については、家族(母子)に研究の依頼を行った上で、平成30年11月~31年2月末までの間に児童発達支援事業所においてビデオ検証を4回実施した。実施に際しては、基本プログラムを参考にしながらも、子ども、母親、および児童発達支援事業所職員らが現実的に実施できるよう内容を変更する形に応用した。具体的には、家庭内に定点カメラを設置し、検証する映像は母子が選び、検証場面にも父親は参加せず、子どもが検証に参加する、という形での応用であった。プログラムの初回と最後には、TK式親子関係テストやPSII育児ストレスインデックスを実施して、親子双方の意識の変化などを確認した。児童発達支援事業所の職員は親子に負担なくプログラムが実施できるよう研究に協力した。また、プログラム終了後には研究者と施設職員は課題や成果について協議を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度の研究がおおむね順調に進展していると判断した理由は、当初の計画通り、研究対象家族を選び、基本プログラムを応用する実験を実際の子育て支援の現場で実施することができたためである。 平成30年度は2家族に対してのプログラム実施を試みたが、結果的には1家族への実施に留まった。実施できなかった1家族については、子どもの通う認定こども園から意見聴取を行うことが可能であった。このデータは、今後プログラム実施の応用版作成の参考とする予定である。 実験の実施に至った家族(事例2)については、子どもの通う児童発達支援事業所において協力を得ながら、家族のスタイルに合わせた形で基本プログラムを応用することができた。基本プログラムを応用した点は、以下の通りである。 ①基本プログラムでは研究所内で家族の触れ合いを撮影したが、事2の親子は、実際の生活場面における課題点を振り返ることを希望したため、家庭での映像を使用することとした点。②家庭の事情で父親はプログラムの実施に参加していない点。基本プログラムは、夫婦の相互扶助を高めることを目的としているが、近年の家庭事情は夫婦が揃っている家庭ばかりではなく、ひとり親家庭における課題も多い。このため家族の実情に合わせることを念頭において実験を行った。③ビデオ検証に小学校5年生の子どもを含めて、4者(子ども、母親、児童発達支援事業所の職員、研究者)で実施した点。なお、検証場面での子どもの参加は、自身の意志に添って実施した。 これら基本プログラムを応用して実験を行った結果、親子や職員からは、応用プログラムの実施がその後の親子関係の改善に効果があったという意見がもたらされた。 本事例の分析やまとめは今後行う予定であるが、年度ごとに1事例のビデオ検証を実施することを計画していたことから、予定通りおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、平成30年度に実験を行った事例2の結果をまとめる。実施した親子関係テストの結果から何が読み取れるかという点で分析し、また、事例の経過の分析も加えて、全体を通して得られた内容を、児童発達支援事業所における応用の結果としてまとめる。その際には①基本プログラムのどの点をどのように応用したのか、②児童発達支援事業所の職員が実施する場合の配慮点について、等について具体的に述べる。 さらに、本年度は昨年度と種別の異なる子育て支援施設でのプログラムの実施(ビデオ検証))を計画し実行する。具体的には児童養護施設(1施設)への実施を視野に入れて施設側に依頼する。児童養護施設では家族再統合に向けた子育て支援が行われていることから、通常は子どもとは暮らすことができない家族に対して実施することとなる。さらに母親に発達障害があることを踏まえて、本プログラム(ビデオ観察と検証)がどのように応用できるのかを検討する。 方法としては、子どもとの面会時にビデオ観察法を実施することが考えられる。または、保護者の意向を尋ねた上で、家庭での一時帰宅時の様子をビデオに撮り、施設に戻った際に、保護者、施設職員とともにビデオ検証を行うことも考えられる。子どもも一緒に検証することが復帰に向けて最適と考えられるならば、その方法も視野に入れることとする。いずれにしても、児童養護施設においては児童指導員や保育士が親代わりとして子どもに接していることから、どのような応用が可能であるのか、或いはどのような点が限界として考えられるのか、施設職員に協力を依頼して、応用の可能性を検討していく予定である。そのためには、施設職員への協力依頼に具体的な説明を行う必要がある。万が一保護者への実施が難しい場合でも、児童養護施設での本プログラム応用案の意見を聴取して、可能な範囲で施設における実施を目指す。
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