2018 Fiscal Year Research-status Report
3次元表象更新のために視覚と網膜外信号を利用する適応的な感覚情報処理過程の解明
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18K03180
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
光藤 宏行 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (00426644)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 視覚情報処理 |
Outline of Annual Research Achievements |
VR機器などの3D情報呈示装置を長時間利用すると、疲労感や酔いなどが生じることがある。これはヒトの3次元形状の知覚に関わる感覚情報統合プロセスが、個人差を含めた形では完全には理解されていないからである。特に日常場面で3次元形状判断を一貫して正しく行うために必要な、新しい感覚入力に基づいて表象を更新するプロセスは十分に理解されているとは言えない。本研究では、適応的な更新のための感覚情報処理と神経情報処理アルゴリズムを明らかにする。ヒトの表象更新プロセスを正確に理解した上で開発される視覚表示装置とそのための表示アルゴリズムの開発によって、現在のディスプレイがもつ疲労感や違和感を解消し、快適な視環境の実現に貢献したい。 本年度は、3次元形状判断に関わる表象更新プロセスを明らかにするために、脳活動計測を併用する心理物理学的実験の準備を行った。実験に用いる視覚刺激は、水平・垂直像差をもつ視覚パタンとし、眼球運動を同時計測する。脳活動を計測するために、大脳皮質活動の時空間的変化を精度高く捉えることができる脳磁図を利用する。眼球運動を記録するために、眼筋図を用いて測定する。心理物理学実験では、両眼パタンを比較的大きな視野に呈示する装置についての準備を行った。 また同時並行して進めた脳磁図を用いた視覚立体判断プロセスを明らかにする研究では、既に得たデータについて脳磁図センサーの時系列波形に基づく分析を行った。分析では、特定の周波数帯域および関心脳部位を設定して、視覚情報および判断正答率を考慮した分析を行い、立体認識に関わる脳内基盤についての一定の知見を得ることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
脳磁図計測を併用した視覚心理学実験のために、映像呈示装置を準備し、実験設備を順調に整えることができた。またすでに行った脳磁図計測実験に関しては、共同研究者との打ち合わせおよび分析を進めて、論文投稿段階にあるためである。
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Strategy for Future Research Activity |
脳磁図計測には、九州大学病院ブレインセンターの協力を得て、Elekta社 306チャンネルNeuromag Vectorview MEG(1000 Hz)を使用する。実験は参加者内要因とし、各条件での繰り返しは80回程度とする計画を予定している。実験は健常成人を対象とし、募集を行う。 以上の実験により、表象更新に関わる神経情報処理プロセスを明らかにする。さらに、手がかりの重みと変化についての明瞭感およびその確信度の相関を個人間で比較することで、個人差を考慮しながら、適応的更新モデルを構築する。
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Causes of Carryover |
実験準備が長引いたこと、さらに脳磁図の実験機器使用料は高額であるため、次年度はそれに充当する。
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