2021 Fiscal Year Research-status Report
Impulsive behavior and the underlying brain mechanisms in a delay-discounting paradigm
Project/Area Number |
18K03182
|
Research Institution | Nagano University |
Principal Investigator |
佐藤 俊彦 長野大学, 社会福祉学部, 教授 (20322612)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 衝動性 / 遅延価値割引 / オペラント条件づけ / マウス / C57/BL / 報酬学習 / 左右の偏向性 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度までに実施したマウスのオペラント学習の実験に関して,北米神経科学会(SfN)で成果発表を行い,他の研究者と情報および意見の交換を行った。今回報告したのは,報酬遅延によって生じたフラストレーションに伴う衝動的行動に関連した実験であり,左右のレバー選択の偏向性と,報酬であった小型飼料(ペレット)を獲得する課題成績との間に関連性があるかどうかを,C57BL/6N雄性マウスを対象とした実験によって検討した。学習課題の成績の指標として,課題の正反応率と反応潜時を調べた結果,選択の偏向性の高い群における正反応率と反応潜時の特徴を明らかにすることができた。この結果より,レバー選択の偏向性と,報酬学習の成績との間に関係性があることがわかった。今後の行動実験を実施する上で,報酬学習の実験パラダイムを検討するための重要な資料が得られたと考える。 上記の研究発表とともに,衝動的な行動の特性と,末梢フィードバックとの関連に着目し,循環器系などから脳へと至る末梢フィードバックに関する理論的考察を行って,これに関連する論文3件を発表し,国際学会での研究発表を1件行った。これらの研究発表の中では,William Jamesの感情学説を取り上げて,末梢機能を重視した感情学説が成立した歴史的背景や歴史的変遷などを議論しながら,末梢から脳へのフィードバックの影響について理論的考察を行った。 また,衝動性に深く関与する脳内メカニズムに関する文献情報の収集と整理を行うとともに,筆者が長年にわたり課題としてきた M. Zuckerman著”Neurobiology of personality”の翻訳作業,特に,衝動性やセンセーションシーキングに関連した章などの訳出作業などを継続し,衝動性とドーパミン作動性神経系などとの関連について整理する作業を行った。 なお,今年度には,アジア認知症学会より,「行動神経科学と災害医療」部門におけるベストポスター賞を受けた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
令和2~3年度には,当初,実験場所として予定していた建物(東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープセンター)の改修工事により実験場所を確保できなかったことや,コロナ禍の長期にわたる継続といった不測の事態の影響によって,実験データ収集を予定通り実施できなかった。令和3年度後半には研究代表者の体調不良による入院などもあり,現時点までに予定していた実験について,計画通り実施できていないものの,令和4年度には,実験によるデータ収集を再開できるように鋭意,準備を進めている。
|
Strategy for Future Research Activity |
上述のように,令和2~3年度における実験データ収集が十分に進められていない一方で,令和4年度には,研究計画の遅れを取り戻すべく,新型コロナウィルスの感染防止に配慮しながら,実験場所を確保し,遅延価値割引に関連した行動実験を再開して,実験データを精力的に収集したい。
|
Causes of Carryover |
本研究の遂行にあたり,令和2~3年度においては,実験を予定していた場所(東北大学サイクロトロン・ラジオアイソトープ・センター)の改修工事,ならびにコロナ禍に関連した研究実施上の問題等が続き,過去2年間には実験をほとんど実施できなかった。この間には,関連文献の収集や先行研究の知見の整理,背景的な理論および方法論の検討,ならびに過去の実験研究に関する成果発表等の業務を中心に遂行してきた。科研費として頂戴した研究経費については,次年度以後の実験に集中的に使用することを目的として経費の支出を抑えてきており,その結果として,次年度使用額が生じている。次年度以後には,集中的に実験研究を実施する予定であり,これらの経費については,次年度の実験研究の中で使用させていただく予定である。
|