2018 Fiscal Year Research-status Report
子どもは誰に同意するのか -幼児におけるコミュニケーション発達の検討から-
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18K03190
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
大神田 麻子 追手門学院大学, 心理学部, 准教授 (90725996)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | コミュニケーション / 肯定バイアス / 反応バイアス / HRI |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、集団内・外の他者に対し、子どもが気遣いや信頼から相手の質問に「はい」と答える傾向(肯定バイアス)を示すか検討するものである。その際には、ロボットと人間に対する子どもの態度の違いについて比較する。 2018年度は、対面のロボットが聞く「はい」か「いいえ」で聞く質問に対し、3~5歳児が肯定バイアスを示すかどうか検討した。これまでの研究では、参加児にロボットを対面で呈示することは技術的に難しかったため、本実験は、そもそも子どもが対面のロボットの質問に対し、どのような態度を示すか明らかにするものであった。その結果、3歳児は人間の質問者に対するのと同じように、ロボットに「はい」と答えることが多い肯定バイアスを示すことがわかった。しかし、対面の見知らぬ大人に気遣いから肯定バイアスを示す年長児は、ロボットに対してはそうした態度は示さなかった。これは、子どもがそもそもロボットの場合は集団内・集団外のどちらであったとしても、気遣いから事実に反する質問に同意を示すことはない可能性を示唆している。 次に、ロボットを集団内・集団外の他者に設定する条件について検討した。3~7歳児と大人がロボットに性別を付与するのかについて調べた。これは、参加児の性別に合わせてロボットを「男の子」「女の子」とした場合に、そのロボットを集団内(すなわち仲間や友達)の他者と認識しやすくなるか調べるための予備実験であった。しかし、年齢が上がるにつれ、ロボットは男の子であるというバイアスが強くなることが分かり、特に7歳以上の参加児(者)の大半がロボットは男の子だと回答した。そのため、集団内の他者として「同じ性別」を設定することは難しいことが明らかになった。今後、ロボットが参加児とおなじ言語を話す場合とそうでない場合、同じチームである場合とそうでない場合について検討する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度は、今後行う予定であるロボットを用いた実験に必要な予備実験を行った。これらの予備実験を通し、2年目以降、集団内の他者あるいは集団外の他者と認識されたロボットに対し、子どもがどのような反応を示すか調べていく。実物のロボットを子どもの目の前に呈示し、子どもとコミュニケーションを取らせるという実験は初の試みであったため、本年度に得られたデータは、初年度としては十分なものであった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、ロボットを集団内・外の他者として子どもに認識してもらうためには、どのような条件が有効かについて、さらに予備実験を通して検討する。2018年度では、ロボットはそもそも「男の子」と認識されやすいという事実が明らかになったため、「仲間」や「友達」としてロボットを認識させるために、ロボットを「女の子」と設定することは、あまり自然なことではない可能性が明らかになってきた。次年度は、同じ帽子をかぶった同じチームなど、身に付けるもので「仲間」を感じさせることができるか、あるいは日本語を母語にする場合と、他の言語を母語にする場合などの検討を行う。 また、ロボットに対して、事実に反する質問に同意するか以外の文脈で、気遣いから肯定バイアスを示すか(白い嘘をつくか)についての検討も行う予定である。
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Causes of Carryover |
2018年度は、3月に海外出張に行ったため、次年度使用額が発生しているが、その額のほとんどはすでに旅費として消費されているものである。残りの金額については、2019年度の研究の遂行(刺激の購入費用や旅費)に使用する。
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