2019 Fiscal Year Research-status Report
子どもは誰に同意するのか -幼児におけるコミュニケーション発達の検討から-
Project/Area Number |
18K03190
|
Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
大神田 麻子 追手門学院大学, 心理学部, 准教授 (90725996)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
Keywords | 肯定バイアス / Human-robot interaction / ロボット認知 / コミュニケーション |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、集団内・外の他者に対し、子どもが気遣いや信頼からロボットや大人の質問に「はい」と答える傾向(肯定バイアス)を示すか検討するものである。しかし前年度の研究で、幼児はロボットが集団内・集団外のどちらであったとしても、気遣いから事実に反する質問(たとえば、赤いリンゴについて「これは緑?」と聞く)に肯定バイアスを示さない可能性が示唆された。 そこで2019年度は、ロボットが自分自身について聞くポジティブ(かしこい?など)とネガティブ(弱虫?など)な質問に幼児が肯定バイアスを示すか調べた。その結果、3歳児は肯定バイアスを示し、5歳児は否定バイアス(「いいえ」と答えることが多い傾向)を示すことが分かった。今後は、対面の大人が同様の質問をした際の幼児の回答傾向について検討する必要がある。 また、前年度に得られたロボットに対する性別バイアス(男の子バイアス)について、色の効果についても検討した。これは元々はロボットを集団内の他者とする場合に、参加児と同じ性別であるという条件を用いるために予備的に行った研究であった。しかし前年度の研究より、5歳ごろからロボットは男の子であるという男の子バイアスが見られることが明らかになったため、この条件は集団内の他者としては用いないこととした。しかしロボットに対する男の子バイアスは興味深い現象であるため、この研究を発展させ、色と性別の情報が関連しているか調べた。ピンクと青の物体(たとえばロボットや車)に対して特定の性別が付与されるか調べたところ、ロボットや車がピンクである場合、男の子バイアスは消失した。しかし、女の子バイアスには転じないことも分かってきた。この研究については、引き続き継続予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、集団内の他者と集団外の他者(人間 VS. ロボット)を比較する予定であったが、昨年度に行った研究では、ロボットに対する子どもの態度が予測していたものとは異なることがわかった。幼児期におけるロボット認識に関する研究はまだ多く実施されておらず、研究計画時に子どもの反応を予測することは難しかった。 一方で、ヒト型ロボットは、今後、子どもの教育や養育に用いられる可能性が高く、幼児のロボット認識については、今後も様々な方面からの研究が必要である。そこで今年度は、、集団内外の設定にこだわらず、ロボットが自分自身のポジティブな側面とネガティブな側面について、3歳児と5歳児が気遣いを示すか調べた。また、当初は予定していないかったロボットに対する男の子バイスについても、発展的な研究も行った。 こうした研究を通し、今後は、たとえばロボットに対する親近感を高めた後に、ロボットに対する気遣いが変わるかなど、子どもががロボットに対してどのようなシチュエーションで親近感を抱きやすくなるのかについて調べる必要性も新たに出てきた。 当初の計画とはと少し研究内容が異なるが、本研究を通し、幼児におけるロボット認識は徐々に明らかになってきており、研究は概ね順調に進展しているといえる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、新型コロナウイルスの影響で、対面で幼児の研究を行うことに対して慎重にならざるを得ない。オンラインで刺激を提示するなど、実験手法を再考する必要があるだろう。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの蔓延により、2月~3月に予定していた海外出張ならびに国内学会がキャンセルとなったため。
|