2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K03191
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
小川 洋和 関西学院大学, 文学部, 教授 (90507823)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 由来眼情報 / 視覚的注意 / 無意識的処理 / 顔認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、刺激がどちらの眼に入力されたかに関する情報である由来眼(eye of origin)情報に焦点をあて、高次視覚情報処理における役割を解明することである。これまで由来眼情報は視覚処理の初期段階で両眼の情報が統合される際に失われると考えられてきたため、高次視覚への影響は全く研究されてこなかった。本研究は、視覚探索における注意捕捉、試行間プライミング、潜在学習などの実験パラダイムを応用して、注意や選好といった高次視覚処理における由来眼情報の役割を系統的に検討することが目的であった。本研究によって、高次視覚においても由来眼情報が保存され、認知・行動に影響を及ぼしていることが明らかになればこれまで想定されていなかった脳内メカニズムの存在を示すことになり、ヒトの視覚系の解明に貢献できると考える。 当初研究計画では、上述のように視覚的注意処理に焦点を絞って検討する予定であったが、研究を進める中で異なる認知メカニズムにおいても由来眼情報が影響する可能性が見いだされてきた。具体的には、表情や嫌悪刺激によって生起される情動処理、人物や性別の同定をおこなう顔処理をターゲットとして、あらたな実験計画を立案し、現在研究を実施している。これまでに、両眼間競合による抑制下における無意識的処理が、トライポフォビアと呼ばれる集合体恐怖を喚起させる画像によってどのように影響を受けるのかを明らかにした。また、両眼に異なる顔を2つ入力すると、2つの顔が融像して別の顔が知覚される現象に着目し、両眼像の融合に性別・表情がどのような影響を与えるのかを検討している。 これらの研究結果は、今後学会発表・論文などを通して国内外に発表し、さらに検討を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上述のように、計画開始当初には想定していなかった現象が発見されたため、研究計画に若干の変更が必要となった。もともとは視覚的注意処理に焦点をあてることを想定していたが、表情判断や性別判断などの顔認知に関わる処理にも注目して研究を進める必要があるかもしれない。そのため、新たに顔刺激の作成や、実験課題の選定などの作業が必要になると考えられる。ただし、研究全体の進捗状況としては概ね順調であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
オブジェクトベース注意処理において由来眼が重要な役割を果たしていることは申請者の研究ですでに示されているが、その詳細については明らかではない。そこでまず、同オブジェクト効果において由来眼情報処理の時空間的特性をオブジェクトの形状・サイズ・位置や呈示タイミングを操作することによって解明する。さらに、同オブジェクト効果以外の実験パラダイムを用いてオブジェクトベース注意における由来眼情報の影響がどの程度一般化できるのかを明らかにする。また、日常物体や顔などに対するオブジェクト処理についても検討を進めたいと考えている。
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Causes of Carryover |
当初予定していた数の実験参加者の応募がなかったため残高が発生した。翌年度に実験参加者への謝金として使用する予定である。
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Research Products
(5 results)