2020 Fiscal Year Research-status Report
タスクセット表象の形成・制御における言語の役割についての認知心理学的検討
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18K03193
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Research Institution | Kansai University of International Studies |
Principal Investigator |
佐伯 恵里奈 関西国際大学, 現代社会学部, 准教授 (90424746)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | タスクセット / 言語的表象 / 認知コントロール |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、行為制御における言語の役割について明らかにするために、タスクセットの形成および制御過程における言語的表象の働きを検討している。タスクセットとは、関連刺激とそれに対する反応規則を束ねる心的表象であり、日常生活のように複数の課題を遂行できる可能性があるときには、その時々に必要とされているタスクセットを適切に選択し実行することが重要である。 今年度の研究では、タスクセットの制御に言語的表象が役立つ状況を検討するために、関連刺激特徴に対する干渉がある場面において、言語的表象の利用可能性が課題遂行に与える影響を検証した。用いた刺激はNavon刺激とも呼ばれる階層刺激であり、小さい数字(局所)がより大きな数字(大域)を構成している刺激である。これまでの研究から局所次元の数字と大域次元の数字が不一致のときに干渉が生じ処理が遅延することが知られている。この性質を利用して、言語的表象が関連刺激特徴で干渉が生じている場面での行為制御に寄与しているかを検討した。実験参加者には、局所次元あるいは大域次元の数字に対して奇数・偶数の判断をすることが求められた。課題遂行中に課題とは無関連な音を構音させる構音抑制法を用いて言語的表象の利用を妨害した。実験の結果、局所次元の数字と大域次元の数字が不一致のときに奇数・偶数判断が遅くなり、従来示されていた干渉効果が認められた。さらに、統制条件と比較して、構音抑制条件の遂行時間が遅延したことから、言語的表象の利用を妨害されると、現在関連している刺激特徴の選択が妨害されることが示された。しかし、構音抑制により生じる二重課題負荷の影響を調べるために設けた足タッピング条件と構音抑制条件の間には有意な違いは認められず、構音抑制の妨害効果が二重課題負荷によるものだという可能性も排除できない結果となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対面での実験が困難な状況が生じたこともあり、計画していた実験の実施に遅れが生じている。また、2020年度に発表予定だった国際学会の開催が2021年度に延期になるなど、成果発表にも遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
タスクセットの形成および制御において言語的表象が果たす役割について、言語的表象を用いることが刺激‐反応規則を束ね、タスクセットの制御を効率的なものにしているという仮説について、干渉場面などの実験文脈的要素も踏まえた実験を引き続き実施する。また、これまでの成果を発表できるよう進めていく。
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Causes of Carryover |
対面での実験が難しい状況が続き、予定していた一連の実験を実施することができず、実験実施に必要な人件費、謝金が未使用となった。また、2020年度に予定していた国際会議が2021年度に延期されたため、参加に伴う予算が未使用となった。最終年度の今年度はできるだけ早く実験を実施し、国際誌に投稿できる形式にまとめる予定である。
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